NEDOと日本グリーン電力開発、量産実現へ実証継続
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と日本グリーン電力開発は9月18日、NEDOの事業「低圧・低水素消費型多機能触媒利用の植物由来SAF実証サプライチェーンモデルの構築」として、日本グリーン電力開発が東京農工大学、ハイケムと共同で開発中の触媒を用いて、世界で初めて食用に適さないココナッツのオイルから100%バイオマス由来の環境負荷が低い航空燃料SAF(ニートSAF)の製造に成功したと発表した。
今回製造したニートSAFは航空燃料としての国際品質規格「ASTM D7566 Annex A2」に適合している。
規格外ココナッツの持つ分子構造は従来のジェット燃料に近く、燃料変換におけるプロセスや水素消費量の削減が期待されている。
NEDOと日本グリーン電力開発は今回の成果で生産効率、コスト、環境の面で優位となるSAF量産の可能性が示されたと分析。今後も実証を継続していく構え。
規格外ココナッツからニートSAFを製造する工程のイメージ(プレスリリースより引用)
2022年時点で、世界のSAF供給量は、世界のジェット燃料供給量の0.1%程度にとどまっており、量産と普及が課題となっている。
ココナッツは全世界で年間7000万~1億tが生産され、その30%相当が未成熟だったり、芽が出てしまったりしたことなどから食用に適さない規格外になっていると見込まれている。そのため、航空業界などから食と競合しないSAF原料としての活用に期待が寄せられている。
同事業で日本グリーン電力開発は、ココナッツの一大産地のインドネシアで規格外ココナッツの選別・調達やオイル化などの原料開発から、ココナッツオイルの燃料変換に適した触媒開発、日本国内における実際のSAF製造に至るまでのサプライチェーン構築に取り組んでいる。
今年3月には同事業での規格外ココナッツの定義策定と選別システムの構築により、規格外ココナッツがSAFの原料としてICAO(国際民間航空機関)の定める「CORSIA認証ポジティブリスト」に登録された。NEDOと日本グリーン電力開発は今回の成果に関し、原料開発と並行して取り組んでいた触媒開発の結果が得られたものとみなしている。
SAF原料として必要なCORSIA認証ポジティブリスト登録に加え、現在は温室効果ガス削減標準値(デフォルト値)の策定も進んでおり、NEDOと日本グリーン電力開発は今回のASTM品質規格適合確認で環境と品質の両面でのSAF製造に向けた条件が整いつつあるとみている。
さらにはインドネシア州政府から地域経済活性化の観点で本事業に対する後押しがあるなど、原料収集地域での理解と協力も進んでいるという。
多機能触媒についても耐久性などを確認しながら、生産効率、コスト面、環境面でより最適な製造フローの設計に注力しており、引き続き原料開発と触媒開発の両面で、同事業の実用化を推進していく方針。
(藤原秀行)