内航海運のゼロエミッション達成後押し
電気推進(EV)船の開発を手掛けるe5ラボと 海事領域のDX支援を担うMarindowsは7月7日、世界初の完全電気推進バイオマス輸送船「あすか」を就航させたと発表した。
「あすか」は内航貨物船としては最も隻数が多い499tタイプで、2基のモーターを駆動力とし、完全に電気のみで推進するEV船。大容量蓄電池と発電機を搭載している。
入出港と荷役中の温室効果ガス排出ゼロ(ゼロエミッション)が可能となり、特に港湾のCNP(カーボンニュートラルポート)に貢献できると見込む。
加えて、CO2排出にとどまらず、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)の発生を回避できるほか、港湾周辺で近年問題となっている煤煙や騒音、振動の排出を無くすことで周辺地域の居住環境を大幅に向上。“快適な周辺地域環境保護”という脱炭素のさらに先の価値を提供することを目指す。
EV化や運航改善といった各種先進ソリューションの組み合わせにより、「あすか」が就航する兵庫県の神戸~相生間の輸送では、既存同型船と比較してCO2排出量を最大50%削減できると見込む。
e5ラボは、共創パートナーの三菱造船と共同で、船全体の開発とEVパワートレインの機能向上を担当。三菱造船が開発したEV専用新型船型は既存船比20%以上の効率向上を実現。さらに、第2世代EVパワートレインの採用により、第1世代EVパワートレイン比でサイズと重量を80%削減し、同時に10%以上の効率向上を達成したという。
「あすか」の仕様
船の種類 |
電動推進バイオマス輸送船 |
主寸法 |
全長71.89m、全幅12.00m、深さ6.91/4.04m、喫水4.01m |
総トン数 /裁貨重量 |
496トン / 1,680トン |
航海速力 / 航続距離 |
11.0 ノット(時速20.4km)/ 2,700マイル(約5,000km) |
積載貨物 |
バイオマス燃料 |
エミッション性能 |
100%ゼロエミッション可能(港内および出入港操船に限る) |
CO2排出量 |
既存船比で最大50%削減 |
推進方式 |
2軸電気推進(360kW x 2基 PMモーター) |
搭載バッテリー |
440kWh リチウムイオン電池 |
企画・開発 / SI / 造船所 |
e5ラボ、Marindows、三菱造船 / IHI原動機 / 本田重工業 |
「あすか」は3月30日に国土交通省海事局が策定した連携型省エネ船のコンセプトを反映した電気推進船第1号船になる見通し。
(藤原秀行)※いずれもe5ラボとMarindows提供