【独自】デロイトトーマツグループの「早朝スタートアップ・ベンチャー支援イベント」が500回超え、物流にも照準

【独自】デロイトトーマツグループの「早朝スタートアップ・ベンチャー支援イベント」が500回超え、物流にも照準

毎回5社が登壇しプレゼン、大手企業などとつながる機会提供

デロイトトーマツグループのデロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)が2013年1月に開始した有望なベンチャーやスタートアップを支援するためのイベント「Morning Pitch」(モーニングピッチ)は開催が累計で500回を大きく超え、有望な技術やサービスを持つスタートアップにとって見逃せないアピールの場となっている。

現在は毎週木曜日に、申し込みがあったベンチャーやスタートアップの中からDTVSが選抜した5社の創業者らが登壇し、自身の起業にかけた思いや目指す事業の姿をプレゼンテーションしている。朝7時スタートながら、投資家や起業家、大手企業や金融機関の関係者らが多数参集、耳を傾けている。モーニングピッチを契機として、スタートアップと大手企業の協業につながった事例も少なくないという。

 
 

物流に関しても年1回はテーマに設定、定期的に開催しており、今年は2月にドローン物流の定着を図るスタートアップなどが勢ぞろいしてそれぞれの立場から物流の課題解決の戦略をアピールした。DTVSの斎藤祐馬社長は「物流関係のベンチャー、スタートアップにこれからもぜひモーニングピッチに挑戦してほしい」と呼び掛けており、物流スタートアップやベンチャーにとっては好機と言えそうだ。


取材に応じる斎藤社長

最初は聴衆6人、現在は200~300人規模に

モーニングピッチが始まった当時は、06年のライブドアショックや08年のリーマンショックのあおりでIPO(新規株式公開)が激減、新興企業への投資もしぼんでしまった苦境からようやく立ち直ってきたところだった。斎藤氏は「ベンチャーやスタートアップが大企業と組みたいと思っても、そもそも大企業側には担当する窓口すらなかった。そこで双方をつなげる役割を担いたいと思い、イベントを開催することにした」と振り返る。

ただ、平日は自分の仕事を抱えているだけに、日中にイベントを行っても企業関係者らがなかなか来られないのが悩みだった。斎藤氏は「やる気さえあれば誰でも来られる時間ということで朝7時に設定した」と明かす。

第1回の際は登壇した企業が2社で、聴衆もわずか6人だったという。しかし、斎藤氏をはじめDTVSのスタッフがモーニングピッチの意義アピールに努めるとともに、登壇するスタートアップやベンチャーのプレゼンテーション内容に磨きを掛けられるようサポートを粘り強く続けた結果、開始から3カ月ほどで聴衆は50人規模まで増えていったそうだ。


モーニングピッチの概要(DTVSウェブサイトより引用)

 
 

現在は毎回、テーマを決めてその領域に関係したスタートアップ5社に登場してもらっている。斎藤氏は「参加者にすれば、例えばAIや量子コンピュータといったように参加すれば特定の領域の最新動向をつかめるし、関係する業界の現状も知ることが可能で、名刺交換もできる。そうしたことをパッケージにして展開していることを評価していただけているのではないか」と語る。今は毎回200~300人規模が訪れる人気のイベントとなっている。

直近の5月29日開催分は「創業から急成長(シード・アーリー)特集」と銘打ち、育休支援システムを手掛けていたり、何度も使えるリユーザーブルカップのシェアリングサービスを展開したりしているユニークな5社が登場した。回数は実に542回目だ。斎藤氏は「毎週朝にこうしたイベントを組織的に500回以上もやり続けていることは、世界のどの国に行っても話をすると驚かれる」と笑う。

2月13日には「物流特集 Beyond2024 ~2024年物流問題を超えて~」をテーマに据えて開催。ドローン物流の実用化に取り組むエアロネクスト、企業間物流の効率化を支援しているLOKIAR(ロキアー)、工場や倉庫内の作業生産性向上を後押しする屋内位置測位システムのGuide Robotics(ガイドロボティクス)、サプライチェーンの運営効率化をサポートするknewit(ニューイット)、海運業・物流業に従事している人向けのコミュニケーション支援ツールを運営しているLogipeace(ロジピース)がそれぞれの立場から物流が抱える課題の解決にどのように挑んでいるかを熱く訴えた。


物流特集(オンライン中継画面をキャプチャー)

これまでに2000社以上のスタートアップやベンチャーがモーニングピッチに登場。マネーフォワード、オウンドメディア運営のGunosy(グノシー)、ラクスル、名刺管理サービスのSansan(サンサン)など知名度が高い企業も見られる。株式上場を果たした企業は80を超えたという。DTVSは日本以外にもシンガポールやインド、台湾などでアジア版モーニングピッチを実施、アジア全域でスタートアップやベンチャーを支援するネットワークを構築しようとしている。

斎藤氏は「まずは1000回を目指したい。10年でも20年でも続けられるようにしたい。物流をテーマに年1回必ず開催しており、今後も続けたい。物流は簡単に状況を変えられる分野ではないと思うが、メガベンチャーが生まれる余地はあると思うので、ぜひ登壇してほしい」と呼び掛けている。

 
 

(藤原秀行)

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