航空機より温室効果ガス最大99%削減見込む、26年後半開始予定
武田薬品工業は9月22日、貨物帆船の設計・運航を手掛けるフランスのVELA Transport(ヴェラ・トランスポート)と事業提携したと発表した。
武田薬品はヴェラが独自に開発した医薬品輸送専用の貨物三胴帆船を使い、欧州~米国間で2026年後半に医薬品の輸送を始める予定。武田薬品は製薬会社が温室効果ガスの排出量が極めて少ない帆船を利用して製品を輸送するのは世界で初めてと説明している。
温度管理可能な冷蔵システムを採用し、製品の品質を維持することを想定している。同システムは船上で生み出した再生可能エネルギーで稼働させる。28年までに船を5隻に拡充して、年間4万8000tの貨物を輸送する計画を立てている。
武田薬品は脱炭素のため航空輸送から海上輸送への切り替えを進めており、2040年までに温室効果ガスの排出量をネットゼロ(実質ゼロ)にすることを目標に掲げている。今回の取り組みもその一環。
ヴェラの貨物三胴船は、海上では100%風力で航行する。輸送に伴う温室効果ガスの排出量を航空輸送比で最大99%、コンテナ船比で最大90%削減できると想定している。
ヴェラはコンテナ船よりも短い15日以内で大西洋横断輸送を実現することを目指している。
三胴船は、無限にリサイクル可能なアルミニウムのみを使って建造。さらに、設計段階から全ての部品を分解可能にしている。
三胴船の概要
・100%風力で航行する大西洋横断船(エンジンは操船時のみ使用)
・積載量:600ユーロパレット(または500米国パレット)
・全船稼働で週1便運航
・医薬品基準準拠の温度管理倉庫(2~8℃/15~25℃)
・サイズ:全長220フィート(65m)、全幅82フィート(25m)、高さ171フィート(52.2m)のマスト2本
・平均速度14ノット、12~15日で大西洋横断
・船内電力:240㎡超の太陽光パネルと水力発電装置2基
・生物多様性保護:帆走時、バラスト水なし、有害燃料なし、海中騒音なし
・社会的側面:フランス籍で運航し、船員はフランスおよびEUの労働基準法の適用を受ける
(藤原秀行)