CBREが30年の東京圏物流施設市場リポート、都心で先進型の立地相次ぐと予想
シービーアールイー(CBRE)は1月23日、2030年の国内不動産市場を展望した特別リポート「人・テクノロジー・環境が変える不動産の未来」のメディア向け説明会を開催した。
リポートは東京圏の先進物流施設の動向に関し、ECの利用拡大に伴い最新型の物流施設へのニーズは引き続き拡大が見込まれると分析。特に女性の就労促進や高齢化に伴い、食品関係の宅配が増えると推測され、冷凍・冷蔵倉庫が増価するのに加えて厨房設備を併設した倉庫が登場する可能性があるとの見解を示した。
生鮮品の宅配利用が広がるため、消費者の居住エリアに近接した倉庫が一層重視されるようになると指摘。東京23区内などで最先端の機能を持つ物流施設の立地が相次ぐと予想した。同時に、老朽化した施設は環境意識の高まりなどで不人気となるため建て替えが進むと解説した。
CBREインダストリアルの高橋加寿子シニアディレクターは説明会で「環境性能の高さも物流施設の競争力を左右することになるだろう。テナント企業が物流施設の機能に注ぐ視線も厳しくなる」と語り、環境対応重視が不可欠と訴えた。
築50年以上が3割に、建て替え促進と見込む
リポートは、EC市場が現状のペースで拡大し続ける一方、小売販売総額が横ばいで推移したと仮定した場合、30年に日本のEC化率は英国並みの17%まで高まると試算。「従来の店舗・企業間物流のセンターがあっても併用できないことが物流施設マーケット拡大の一因」と言及し、今後もECの成長が物流施設の成長につながる状況が持続するとの予測を示した。
食品類はいまだEC化が進んでおらず、今後の伸びしろが大きいとの見解を示唆。女性の就業や高齢化に伴い調理済み商品を自宅で食べる「中食」も広がり、生鮮品と一緒に宅配されるようになるとみており、「そうなると冷蔵・冷凍設備の整った倉庫だけでなく、厨房設備を併設した倉庫が登場する可能性もある」との見方を明かした。
また、食品のEC需要拡大で生鮮品を扱う機会が増えれば、居住地に近いことが倉庫の要件としてさらに重視されるようになると明言。「東京23区や外環道の内側の地域はラストマイルの倉庫適地として価値が高まるだろう」と述べた。
また、人手不足などの潮流を踏まえ、最新の技術が庫内作業と配送の両方に活用されると期待。30年には高度経済成長期に建てられた築50年以上の倉庫が3割を超えるとみられる点を基に「災害が多発する日本の現状と環境意識の高まりから、今後は倉庫の建て替えが促進されるだろう」と明言。都心部でも最先端の物流センターが複数登場するとの予想を盛り込んだ。
(藤原秀行)
リポートのダウンロードはコチラから