独ユニパーやシーメンス・エナジーなどと連携、荷役機材の燃料電池化にらむ
豊田通商は10月5日、英国子会社のToyota Tsusho UK Ltd.(豊田通商U.K、TTUK)が欧州でガス・電力事業最大手の独Uniper(ユニパー)、エネルギー事業大手の独Siemens Energy UK&I(シーメンス・エナジー)、港湾の管理・運営などを手掛ける英Associated British Ports(アソシエイテッド・ブリティッシュ・ポーツ、ABP)と共同で、英国政府の補助金事業「Clean Maritime Demonstration Competition」に採択された同国イミンガム港で水素を活用した脱炭素化プロジェクト「プロジェクトメイフラワー」を9月に開始したと発表した。
英国は2035年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で78%削減、50年までにネット排出量ゼロとの目標を掲げている。事業分野別の排出量では「Transport」(港湾を含む輸送分野)が30%と最も大きな割合を占めている。今年11月に同国で第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が開催されることも見据え、補助金事業の推進なども含め産業界とも連携しながら積極的に温室効果ガスの排出削減に取り組んでいる。
今回のプロジェクトは水素を活用した港湾での脱炭素モデルの構築に向け、英国最大の貨物量を扱うイミンガム港で水素の製造、供給、利用における技術的・経済的な実現可能性を検証。将来の事業化に向けた計画の策定を目指す。具体的には、ディーゼルや重油を動力源とする港湾荷役機材の水素燃料電池化(FC化)をにらみ、水素の製造・輸送・貯蔵の可能性を探る。
ユニパーは再生可能エネルギーを電力として活用し、シーメンス・エナジーが手掛ける最先端の電気分解装置で、製造時に温室効果ガスを出さない「グリーン水素」の製造を目指し、プロジェクトの技術評価をリードする。ABPはイミンガム港を含む英国内21の港を運営している知見を生かし、港湾での水素活用をサポートする。
豊田通商グループは20年9月から米ロサンゼルス港でFC化に向けた地産地消モデルの調査に取り組んでおり、港湾の脱炭素化のノウハウを最大限発揮しながら港湾設備や水素充填などのインフラの整備、温室効果ガス削減量などの評価を行う予定。
今年9月から22年3月まで実現可能性の調査を実施し、22年以降に資金面の確保を含めた事業化の検討を進める。25年までにイミンガム港で使用するグリーン水素20メガワットの製造を含む商用化を目指してプロジェクトを進める。
イミンガム港の所在地
イミンガム港(いずれも豊田通商ウェブサイトより引用)
(藤原秀行)