超高性能断熱保冷
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)発ベンチャー企業のツインカプセラとタイガー魔法瓶は10月12日、JAXAが宇宙空間からの大気圏再突入カプセルの開発で獲得した超高性能断熱保冷技術をワクチン輸送などの分野に活用するため、業務提携で合意したと発表した。
熱制御テクノロジーを用いた魔法瓶などの真空断熱で高い技術力を持つタイガー魔法瓶と、超高性能断熱保冷技術の設計・解析・試験などで強みを持つツインカプセラが、互いの強みを補完し合い、検体やワクチン、医薬品の保管・輸送など、高度な温度管理が鍵となる分野で課題解決を後押しするのが狙い。
業務提携は技術面にの協力に主眼を置き、製品開発のフェーズでツインカプセラは事業全体の取りまとめや製品企画、製品全体設計・解析、関連機器の設計・製造、検証試験などを担当、タイガー魔法瓶は事業開発への協力、真空断熱容器(魔法瓶)に関する技術支援・性能向上策の実施、真空断熱容器の供給などを担う。
2018年11月にJAXAは、独自に開発した大気圏再突入カプセル(HTV搭載小型回収カプセル)で国際宇宙ステーション(ISS)から宇宙実験サンプル(高品質タンパク質結晶など)を保冷状態で地上に回収することに日本で初めて成功した。その際、JAXAは大気圏再突入中も含めたミッション期間中にサンプルの温度を要求範囲(4度±2度)に維持するため、再突入カプセル用の超高性能断熱保冷容器を開発した。
(参考 JAXAの小型回収カプセルミッションの概要:https://twincapsula.co.jp/result/)
JAXAの再突入カプセルミッションの概要
JAXA再突入カプセル用断熱保冷容器(宇宙からの帰還後)とJAXA開発担当者(ツインカプセラ創業メンバー)
業務提携により開発を進める超高性能断熱保冷容器は、地上における様々なニーズに対応。具体的な利用分野の例としては、主に下図に示すようなバイオメディカル系の分野が想定されるが、他用途でも温度維持が重要な分野は多く存在しているため、活用のフィールドはさらに広がる可能性を有している。
特に、「小型」と「高い保冷性能」という両立が難しい2つの特性を同時に実現できること、電源を使用せずに長期間の保冷が可能であることなどの特長を備えている。従来は対応が困難だった課題解決への活用が期待されている。
ツインカプセラの宮崎和宏代表取締役は「JAXAの断熱保冷容器開発への参画を得るべく初めてタイガー魔法瓶様を訪問させて頂いてから6年、2018年の回収カプセルミッションの成功を経て、あらためてタイガー魔法瓶様と連携させていただけることとなり、大変嬉しく、また心強く感じている」とコメント。「推進中の製品開発をさらに加速させ、宇宙発の超高性能断熱保冷技術を早期にご活用頂けるよう、引き続き努力する」と強調した。
(画像はプレスリリースより引用)
(ロジビズ・オンライン編集部)