健康経営ってなに?:日東物流・菅原拓也代表取締役
そもそも、どうして従業員が健康でいることが経営を大きく前進させることにつながるのか、核心に迫ります!
菅原代表取締役(日東物流提供)
「みんなが健康なのが重要」という本質にたどり着いた
いやー、暑くなってきましたね~。
そろそろ熱中症対策しなきゃ!と思われている経営者の方も、多いんじゃないでしょうか。
てことで今回は、“健康経営”について、前後編の2回に渡ってお話してみたいと思います。
そもそも、ここ数年で急激に、社会的に注目されてきた“健康経営”って、いったい何でしょうか。
僕的には、“健康経営”とは、企業が従業員へ健康投資することによって、組織の活力向上や生産性向上をもたらし、最終的に業績アップに繋げる経営手法だと、理解しています。
「おいおい、そんなんで業績アップとか、ありえないだろー」
「またまた、風が吹けば桶屋が儲かる、みたいな話だろー」
「いやいや、健康とか言うヤツに限って、怪しいだろー」
はいはい、わかります、わかります。
雑誌の裏表紙にある怪しい開運ブレスレットの広告くらい、怪しいですよね?
でもこれ、あながち間違いじゃないんです。
だって当社は、以前もお話した通り、過去に起こした死亡事故をキッカケに、コンプライアンス重視の施策を進めていく中で、「結果的」に“健康経営”と呼ばれる手法を取り入れた事で、財務体質が強化していったのですから。
この「結果的」という表現の通り、最初から意図して“健康経営”に取り組もうとしていた訳ではありませんでした。というのも、事故による営業停止処分後、企業体質を変えるために意識したのは、「本質を理解して物事に取り組む」ということでした。
例えば、企業は従業員に対して、健康診断を実施しなければならないと法令で定められています。
法令遵守のために健康診断を徹底することも出来ますが、僕たちは「ナゼ、健康診断が必要なのか?」を真剣に考えました。そうすると「病気の早期発見」や「健康起因事故の低減」といったメリットだけでなく、みんなの「家族との幸せな時間の増加」や健康寿命が延びることによる「生涯賃金の増加」といったことにも気付きます。
こうして、「ナゼ」を深堀りしていくと、健康診断が目的なのではなく、“みんなが健康であること”が重要であるという、本質を理解する事ができます。
本質に気付くと、ただ健康診断するだけでは足りないような気がしてきます。
“みんなが健康であること”を実現するためには、より多くの健康支援施策が必要になり、当然大きな費用が必要になりますが、まずは出来ることから、お金の掛からないことから進めていくのがオススメです。
当社の場合は、有所見者との面談から始めました。診断結果の会話を通して、自身の健康状態を把握してもらい、健康に興味を持ってもらって改善する方向へ促す・・・以降、気付けば管理栄養士との面談実施や、脳MRI(磁気共鳴画像装置)やSAS(睡眠時無呼吸症候群)検査の導入、予防接種費用の企業負担、禁煙キャンペーンの実施など、少しずつアップデートしながら、10年近く取組み続けてきました。
これが当社の“健康経営”であり、冒頭の「結果的」という言葉は、こうした背景があったからなのです。
定期健康診断の受診を徹底(日東物流提供)
もちろん取組みに際し、従業員に面倒くさがられたり、否定的な対応をされたりしたこともありました。それでも真剣に“みんなが健康であること”を考え、まず出来ることから始め、諦めずに続けることで、成果を出すことができました。続けていくことで、それが会社の雰囲気となり、雰囲気が変われば組織は自走するようになり、“健康であること”をみんなが自分で追求するようになるのです。
頭でっかちに“健康経営”を考えず、まずは出来ることから、お金の掛からないことから、前向きに取り組んでみませんか?
というわけで、前編となる今回は、ここでおしまい。
来月の後編では、“健康経営”がどのように会社の財務に好影響を与えたのかについて、お話していきますので、ご期待くださいね~♪
日東物流twitter:@nittobutsuryu
大学卒業後、大手運送会社などを経て2008年、家業である日東物流に入社。2017年9月、代表取締役に就任。コンプライアンスの徹底や健康経営の実践を通して企業体質の健全化のみならず財務体質を強化させる経営手法が評価され、千葉県の物流企業として初めて、経済産業省の認定する「健康経営優良法人」に選出されているほか、リクルート主催「GOOD ACTIONアワード」を受賞するなど、物流業界で注目を集めている。
6月に千葉県の淑徳大学で、コミュニティ政策学部の学生に向け、物流業界の課題をともに考える授業を実施。講師を務める菅原氏(日東物流提供)