時間大幅短縮に成功、23年度の実用化目指す
日本電気(NEC)は8月24日、BIRD INITIATIVE、自律調整SCMコンソ―シアムと電子部品購買業務で購買側のAIが販売側の人と納期や数量の調整を行う自動交渉AIの実証実験を共同で行ったと発表した。
通常は数日から数週間かかる調整が分単位に短縮され、大幅な効率化が見込まれることを確認したという。実証結果を踏まえ、2社は自律調整SCMコンソ―シアムの活動を通じて、自動交渉AIの適用業務の選定、社会実装を推進し、2023年度の実用化を目指す。
自動交渉AIは、交渉の場面で相手との調整や双方の利益を最大化するような最適解を自動で導く技術。従来、購買担当者は生産計画変更の際、必要部品の在庫を確認して不足量を予測し、需給状況に応じたサプライヤーとの交渉に多くの手間と時間を要していた。
自動交渉AIは、状況によって異なる複雑な条件を考慮し、適時・適量の確保に向けて瞬時に最適解を導き出し、業務の効率化を図る。今回の技術は8月31日~9月2日に千葉市の幕張メッセで開催される「第1回スマート工場EXPO[秋]」に出展する。
電子部品の購買は部品の種類が膨大かつメーカーも多数におよび製品ライフサイクルも短いことに加え、半導体不足や世界情勢の変化によるサプライチェーン不安定化の影響を受けて、販売側と購買側の間でイレギュラーな調整がさらに増加するなど業務の負担がますます増えている。
従来、このような個々の条件が異なる調整や交渉は人でなければ対応できない領域と考えられてきたが、人手不足やサプライチェーンの急速な変化を受けて自動化のニーズが高まっているのに対応、自動交渉AIの実用化に踏み切った。
実証実験の概要
<実証期間>
2022年6~7月
<実証内容>
NEC関係会社が実際に取引先企業から購入している部品に関して、購買側(NEC関係会社側)が生産計画の変更を受けて発注数量や納期の変更が必要になったシーンを想定。部品の在庫状況と手配状況の実データを用いて、購買側に導入された自動交渉AIが、チャットボットを介して販売側(取引先企業)の担当者(人)と納入条件の変更調整を行えるかを検証した。
具体的には、在庫に余裕がない場合の購入量を増やす手配や、急な生産計画変更に伴う部品の手配数量の増減といったいくつかの需要変動のパターンについて、調整結果の妥当性や調整に要した時間・工数を評価した。
① 購買側で生産計画の変更に伴う部品の需要変動が発生し、自動交渉AIが当該部品の数量、納期の調整を行うために変更要求を販売側(取引先企業)に送信
② 販売側は①の要求を受領し、チャットボット画面にて、担当者が対応可能な数量、納期を回答
③ 購買側で②の回答を受領し、自動交渉AIが追加あるいは削減数量と希望納期をチャットボット画面に回答
④ 上記②、③の調整・交渉を、合意に至るまで自動交渉AI(購買側)と人(販売側)で実施
今回、NECの自動交渉AIを活用し、生産計画の変更を受けて、必要な部品の在庫状況と発注状況、納入リードタイムから、自社の効用(利益)を最大化(必要な部品の適時・適量確保)するために、追加・キャンセルすべき発注数量と必要時期の算出を行い、販売側担当者と合意に至るまで数量、納期の変更調整・交渉を行った。
実証実験の概要
今回の実証実験では、販売側の在庫で購買側と調整できる解が存在する場合には、自動交渉AIと販売側担当者の間で合意することが可能で、従来は販売側との調整・交渉にかかっていた時間を以下のように短縮することができた。
※販売側担当者からの回答待ちの時間も含む
自動交渉AIにより、在庫確認、発注量算出、販売側担当者とのやりとりが自動化され、取引先との調整がスピードアップすることで、購買担当者は部品在庫の適正化や予期せぬ需要変動への対応などに取り組める余力が増え、変動対応力の向上につながることが期待される。
今回は、購買側が自動交渉AIで販売側が人という形態で実証を行っており、今後は購買側が人で販売側が自動交渉AI、または購買側・販売側の双方に自動交渉AIを導入する形態での検証も進める予定。
(藤原秀行)