2019~22年にかけ、架空のコンサル料水増しか
日本ロジステックと楽天モバイルの担当者が共謀し、楽天モバイルに対して不正な水増し請求をしていた疑いが浮上している問題に関し、被害額が現時点で40億円超に上る恐れがあることが分かった。楽天モバイルは当該の自社従業員を8月に懲戒解雇、刑事告訴した。
日本ロジステックは楽天モバイルの携帯電話基地局の部材の輸送・保管などを担ってきた。関係筋によれば、日本ロジステックと楽天モバイルの担当者は2019~22年にかけ、日本ロジステックから通常の業務委託料に加え、架空のコンサルティング料を上乗せして楽天モバイルへ不正請求していたとみられる。水増し分はいったん日本ロジステックに支払われた後、楽天モバイルの当該従業員に還流していた公算が大きい。
東京都内の、日本ロジステック本社が入るビル
楽天モバイルは社内調査を実施、その結果を基に刑事告訴した。併せて、日本ロジステックの預金約4億円の仮差し押さえを東京地裁に申請、認められたことなどから日本ロジステックは資金繰りに行き詰まり、同地裁に民事再生法の適用を申請した。
別の関係筋によると、日本ロジステックは9月1日に東京都内で開いた債権者集会で、主要取引先の担当者との間で不適切な取引があったことが発覚した旨の説明をしたものの、楽天モバイルの名前を含めて具体的な内容は明らかにしなかったという。
帝国データバンクによれば、日本ロジステックの22年3月期の売上高は405億6900万円。本業の物流事業は堅調だったようだが、不正取引の発覚で一気に運転資金が使えなくなり、窮状打開のため、債権への弁済をストップできる民事再生法の適用を選んだもようだ。
債権者集会で日本ロジステックの出席者は、不正な水増し請求は楽天モバイル以外にはないと報告、事業継続に問題はないとの認識を示したもよう。ただ、今後は楽天モバイルから損害賠償請求を迫られる可能性がある。担当者による不正行為への加担が明らかになったことで、日本ロジステックの信用も低下が避けられない。民事再生法の適用申請以降、9月4日までの間、債権者集会以外には公式の場で一切、同社が不正行為も含めて情報発信していない点についても、関係者から不満の声が出ている。
順調に行けば、東京地裁から今週中に再生手続きの開始決定が成され、具体的な再生計画の策定が本格化する。再生計画が東京地裁に認可されるには、今回のような不正行為の再発防止策が重要な位置を占めるとみられる。日本ロジステックの経営陣にはまず、不正に至った背景などの説明が強く求められる。また、楽天モバイルにも、水増し請求に関連し、荷主の立場を悪用した行為がなかったか、あらためて検証することが義務と言えそうだ。
(藤原秀行)