「名代」と表現か、会社側は難色
国土交通省元事務次官の本田勝氏(現東京地下鉄会長)が、空港のオフィスビルや格納庫の管理・運営などを手掛けている東京証券取引所プライム市場上場の空港施設に対し、国交省OBの副社長を社長に昇格させるよう要請していたことが分かった。
本田氏は1976年に旧運輸省(現国交省)入省。自動車交通局長、鉄道局長、航空局長、官房長、国土交通審議官(運輸担当)を経て2014~15年に事務次官を務めた。退官後は損保ジャパン日本興亜顧問などを経て、19年から現職。
関係筋によると、本田氏が昨年12月、空港施設の乗田俊明社長、稲田健也会長と面会。国交省の元東京航空局長だった空港施設の山口勝弘副社長を社長にするよう求めた。乗田社長らは取締役会などの手続きを経ないと答えられないと難色を示したという。
また、本田氏は乗田社長らと面会した際、自分は国交省の有力OBの「名代」として来たと表現するとともに、山口氏が社長に就けば国交省として経営をサポートする旨を説明したという。
関係筋によれば、本田氏は国交省の権威を使って役員人事に介入しようとしたことはないと否定している。しかし、航空領域で許認可権限を持つ省庁の元幹部が人事を要請すること自体、民間企業にとっては大きな圧力になるだけに、本田氏の行動は多くの問題を抱えており、批判は免れられない。
空港施設は1970年、航空測量大手の国際航業から分離・独立して誕生。現在は日本航空(JAL)、ANAホールディングス(HD)、日本政策投資銀行などが大株主となっている。かつては国交省出身者が社長に就いていたが、現在はJAL出身の乗田氏が社長、ANAHD出身の稲田氏が会長を担っている。
国家公務員法は中央省庁が職員の民間企業への再就職をあっせんしたり、中央省庁職員が利害関係のある企業に対して特定の地位に就かせるよう求めたりすることを禁じている。ただ、元職員によるあっせんについては規制の対象外。
(藤原秀行)