全国初、地滑りで孤立世帯にドローンが救援物資輸送・消防本部が2時間要する難所を「3分」で完了

全国初、地滑りで孤立世帯にドローンが救援物資輸送・消防本部が2時間要する難所を「3分」で完了

大分県が由布市で実施、県内事業者と連携

大分県は7月18日、記録的な豪雨で大規模な地滑りが発生した由布市で、孤立した住民にドローンで救援物資を輸送したと発表した。県によれば、災害時に県内の事業者のみで救援物資をドローンで届けたのは全国で初めてという。

県によると、6月30日からの大雨で、由布市湯布院町川西地区で大規模な地滑りが起き、孤立世帯が発生。7月1日に、大分県と大分県ドローン協議会の間で今年3月に締結した「災害時のドローンによる緊急被災状況調査に関する協定」に基づき、佐藤鉄工(由布市)が緊急被災状況調査を手掛けるとともに、県内ドローンメーカーのciRobotics(シーアイロボティクス、大分市)の機体を用いて、県内ドローン運航事業者のノーベル(大分県日田市)が運航を担当。孤立世帯への救援物資配送を実施した。

同協定に基づいて緊急被災状況調査を行ったのは初めてで、県内の実災害でドローンによる救援物資配送に踏み切ったのも初。災害が発きた直後にドローンで救援物資輸送に対応した事例も全国最初という。今後、災害時のドローン活用がさらに進むことが期待される。


災害現場の全容

県によれば、雨で防災ヘリが出動できない中、ドローンによる緊急被災状況調査の映像は、由布市、由布市消防本部、大分県警察本部をはじめ、関係機関が共有。その後の災害対策の検討に活用するとともに、マスコミ各社に提供することで被害の甚大さを県民に素早く伝達し、早期避難などの働き掛けに生かした。さらに、目視では確認できない裏側の地滑りの発見にもつながったという。

通信状況が悪く、携帯電話も通じにくい中、 無線電話、衛星電話と食料品を配送することで被災者との連絡手段の確保などを果たせた。斜面や草木が生い茂る道なき道を開拓しながら消防本部が約2時間をかけて孤立地域へたどり着く難所を、ドローンは3分で救援物資の配送を行えたという。


救援物資(約5kg)


ドローンによる救援物資配送


物資配送後に被災者と無線電話で会話する様子


輸送したルート

大分県は2017年度、全国に先駆けてドローン産業振興事業を立ち上げ、産学官連携による大分県ドローン協議会を設立。研究開発や人材育成に取り組むとともに、地域課題の解決に向けたドローン物流事業の実証実験を進めてきた。

災害時のドローンによる調査は、被害状況の早期把握や救助活動の迅速化など、より効果的な災害対応につながることが期待される一方、どういった指示系統の下、誰が撮影し、その撮影した映像をどう関係者で共有するかが課題だった。2022年度に大分県と大分県ドローン協議会会員が連携し、実災害でのドローンによる調査の実証を県内4カ所で実施した。

その結果、災害時のドローン調査による課題を克服できたため、今年3月に協定を結び、6月1日に活動を開始した。


関係者の協力の概要

20年7月の豪雨では、国道の寸断などにより孤立地域が発生したほか、携帯電話も不通になるなど連絡手段の確保が課題となった。大分県は県内事業者らと連携し、孤立地域の連絡手段の確保と早期救援を目的に実際に孤立地域となった日田市中津江村平野地区などをフィールドとして、衛星電話などの救援物資配送の実証を20~22年度に実施してきた。

(藤原秀行)※いずれも大分県のプレスリリースより引用

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