24年度中に対象者全体が利用可能に、生活品質向上目指す
商船三井は10月30日、モバイルアプリケーションを介した電子決済サービスによる給与支給などで船員の生活品質を向上させるため、グループの船舶管理会社が管理する船に乗る全船員向けに、海運に特化した決済サービス「MarTrust(マートラスト)」を導入することを決めたと発表した。
2024年度中に対象の全船員が利用できるようにする計画。
MarTrustは海運業界向けのDXソリューションを手掛けるアラブ首長国連邦(UAE)のマルクラグループのMarTrustが提供する船員給与向けの国際送金サービス。
MarTrustの採用で、船員にe-Walletアカウントと国際ブランドの付帯デビットカードを付与し、モバイルアプリケーションを通じた銀行口座への送金やe-Wallet間の送金が可能になる。ほぼ全世界のATMからの現金引き出しにも対応しており、電子で受け取った分をキャッシュに変えることも可能。
船員の給与は、国際条約によって銀行口座への振り込みが義務化されているが、給与の一部を船上で受け取れるようになっており、これまではその分が現金で支給されてきた。MarTrustの導入に伴い、現金で受け取っていた分を電子で受け取ることができる上、国際ブランドの付帯デビットカードも合わせて支給される。
従来、現金で受け取った給与を親族などに送金する際、船員配乗会社を通じて送金手続きをする必要があり、送金先に制限があった上に、送金まで約1か月も要していた。MarTrustの登場で、現金支給されていた給与分をモバイルアプリで受け取り、希望する送金先へ直接 数日で送金できるようになる。
また、船員の国籍によっては、全世界で使用できるクレジットカードを保有していない場合があり、オンラインショッピングの利用で制限を受けたり、寄港地での買い物は現金で行う必要があり両替の手間が発生したりと課題を抱えていた。
MarTrustの付帯デビットカードはほぼ全世界で利用できるため、オンラインショッピングや寄港地での買い物が容易になる。
これまで、給与の一部が現金支給されていたため、主に船長が船上での収支管理や船舶管理会社へ報告していたが、電子化で手間と時間を省略。現金支給分を全てモバイルアプリ上で受け取ることで、現金紛失のリスクもなくなると期待される。
今年4~7月にグループの管理船でMarTrustの導入トライアルを実施、参加した船員からのサービスの必要性とメリットを感じるとの声が多く出たのを受け、本格導入に移行することにした。
10月17日に実施したMarTrust社長との打ち合わせ(左から)商船三井・木村隆助常務執行役員、MarTrust・Domenico Carlucci Director、商船三井・遠藤充常務執行役員、山内章裕エネルギー輸送船船舶管理戦略統括部長)(プレスリリースより引用)
(藤原秀行)