日立造船と商船三井、ヤンマーPTが今秋頃から実海域で実証試験開始へ
日立造船と商船三井、ヤンマーパワーテクノロジーの3社は4月11日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」プロジェクトで採択された「触媒とエンジン改良によるLNG燃料船からのメタンスリップ(燃やされないまま漏れてしまうメタン)排出削減技術の開発」に関し、陸上試験で削減率93.8%(エンジン負荷率100%時)を達成したと発表した。
日本海事協会(NK)から削減率達成の確認を証明する鑑定書を世界で初めて取得した。
鑑定書受領セレモニーの様子
今回の事業は2021~26年度までの6年間で、メタン酸化触媒とエンジンの改良を組み合わせ、LNG(液化天然ガス)燃料船のメタンスリップ削減率70%以上を達成するのが目標。陸上でも確立されていないメタンスリップ削減技術を、世界に先駆けて海運分野で社会実装することを目指している。
日立造船とヤンマーPTはLNGを燃料とする舶用エンジンから出るメタンを酸化させることでメタンスリップを削減する「メタン酸化触媒システム」を2022年に開発。世界で初めて「基本設計承認(Approval in Principle)」をNKから取得した。
23年12月に行った陸上試験では、EGR()を用いたエンジン改良とメタン酸化触媒システムを組み合わせることで目標の70%以上を大幅に上回る削減率93.8%を達成した。この結果が高く評価され、NEDOによる今年2月の継続支援対象選定審査を通過した。
今後は今秋頃から商船三井が運航する大型石炭専用船(船名REIMEI「苓明」)を使い、実海域で実証試験を始める。
国際海事機関(IMO)は2050年頃に海運領域の温室効果ガス排出実質ゼロを目指すことを23年7月、新たに採択しており、船舶の燃料を温室効果ガス排出が少ない新燃料へ転換する技術開発が進められている。
船舶の燃料は、将来はメタノールやアンモニア、水素の活用などが考えられているものの、足元では今すぐ実現可能な低排出燃料としてLNG燃料の普及が進んでいる。しかし、LNG燃料はCO2削減効果がある一方、メタンスリップが課題となっている。
3社は今回の事業を通じて早期にメタンスリップ削減技術を確立させ、国際海運分野における温室効果ガスの排出削減へ積極的に貢献していきたい考え。
メタン酸化触媒システム試験ベンチ
実証船「REIMEI(苓明)」
事業における各社の役割と社会実装に向けた取り組み
(藤原秀行)※いずれも3社提供