公取委が社名公表、適正な価格転嫁促進狙い
公正取引委員会は3月14日、コスト上昇分を取引価格へ適正に転嫁することを促すため、発注側と受注側の取引状況に関する調査結果を公表した。
この中で、相当数の取引先について協議を経ない取引価格の据え置きなどを確認した企業として、独占禁止法に基づき、日本通運と電通、コーナン商事の3社の実名を公表した。
調査は2023年6月から24年5月までの1年間を対象に、期間中に受注先と取引価格の据え置きの有無、据え置いた場合に価格協議があったかどうか、取引先から代金引き上げ要請があった場合に書面で回答したかどうかなどの点を確認した。
その結果、日通など3社で、十分に協議せずに取引価格を維持していたケースを多数確認した。公取委は独禁法で、法律の適正な運用を図るため、事業者の秘密を除いて必要な事項を一般に公表することができると定めているのに則り、今回3社の名前を公開することにした。
公取委は今回の社名公表について、「独禁法または下請法に違反すること、またはその恐れを認定したものではない」と説明。一部の受注側とは価格転嫁を進めていた事例などがあったと指摘している。
日通は同日発表したコメントの中で、「当社は『調達基本方針』に則り、事業を通じ世界の人のより良い暮らしと持続可能な社会の発展を目指し商品・サービスの調達を行っております。2023 年より協力会社をはじめとするお取引先様と定期的に取引料金が適正な水準であるか確認し、必要に応じて価格改定を行う『価格交渉月間』を年2回設定し、推進をしてまいりました。また、お取引先様からの要望については、随時協議に応じてまいりました」と説明。
その上で、公取委の指摘を受け「この度のことは大変重く受け止めており、今後、協議を経ない価格の据え置きの再発防止を図るとともに、お取引先様との定期的なコミュニケーションに努め、良好なパートナーシップ関係を築いてまいります」と強調した。
電通は「公表を真摯に受け止め、サプライヤーの皆様との相互連携を強化し、顧客や社会の発展に資する持続可能なサプライチェーンを構築していきます」とのコメントを発表。
コーナン商事も「取引企業様と労務費、原材料価格、エネルギーコスト等の上昇分の取引価格への反映を明⽰的に協議するよう社内徹底してまいります。また、協議の場においては率直な意⾒交換ができるように配慮し、取引企業様との相互信頼に基づき、お互いの発展を目指す所存です」の声明を出した。
(藤原秀行)