【現地取材】「2024年問題」対応で中継対応拠点開発に注力、脱炭素配慮も

【現地取材】「2024年問題」対応で中継対応拠点開発に注力、脱炭素配慮も

プロロジス日米トップ記者会見、需給バランスは27年ごろ健全化と展望

プロロジスのハミード・モガダム会長兼CEO(最高経営責任者)と日本法人の山田御酒会長兼CEOは3月21日、東京都内で記者会見し、自社グループの物流施設開発状況などを説明した。

モガダム氏は、米国のトランプ政権誕生などでグローバルの経済環境が大きく変わっていることについて、慎重に影響を見極めて行動していく必要があると分析。併せて、先進的な機能を持つ物流施設の需要は今後も底堅いと期待を示し、脱炭素に配慮した物流施設を開発していくことに強い意欲を見せた。

 
 

山田氏は、「物流2024年問題」の影響で、長距離中継輸送の荷物積み替えなどに対応可能な中継拠点となる物流施設のニーズが地方エリアで見込まれると指摘、今後も開発に注力する構えを見せた。また、日本の物流施設市場について、2027年ごろには供給過剰から需給バランスが健全化に向かい、空室率も低下していくとの見通しを示した。


会見後に握手する山田氏とモガダム氏

モガダム氏は、トランプ米大統領が個々の国々との関税引き上げを表明、世界的に貿易やサプライチェーン運営に大きな影響が出ると懸念されている件に関し「例えば(製造拠点など)ありとあらゆるものを米国に戻してくる、オンショア化するというようなことは、十分な労働者が確保できないし、対象とする業界があまりにも広範でノウハウがないだけに、困難だと感じる。カテゴリーごとに様相は異なってくるだろう」と展望。

「強硬姿勢を取ると、長期的には経済にとって良いことではなくインフレ(の勢い)を引き上げてしまう。(関税などの問題が)今後どういう影響が出るか、すごく慎重に注視しないといけない」との考えを示した。

物流施設事業については「マーケットは金融危機や新型コロナウイルス禍を経て、基本的には上昇気流にある。2022年、23年は若干弱含んだが、反発していく」と展望、先進的な物流施設への需要は今後も根強いと展望した。併せて、物流施設での再生可能エネルギー活用をより積極的に推進、持続可能性の向上に努めるスタンスを強調した。


会見するモダガム氏

 
 

山田氏は、日本の物流施設開発の事業環境が競争激化や建設コスト上昇で厳しさを増していることについて「プレーヤーが80社、90社になるのはちょっと異常だと感じる。建設コストがこれだけ上がり、金利などあらゆるものがデベロッパーにとってマイナスに動いている。こういう状況の中で、投資家の利回り目線が上がってくるので、デベロッパーとして非常にやりにくくなってくるのが実態だ」と説明。

「全てを解決するのは賃料をちゃんと払っていただくことだが、一気に賃料を2割、3割上げてそれでいいとおっしゃるお客様はなかなかいない。(賃料アップに)時間がかかるので、耐え切れなくてマーケットから出ていく人はいると思う」と述べ、物流施設開発から撤退するデベロッパーが今後出てくる可能性があると指摘した。

さらに、建設費上昇などで26年ごろに物流施設の新規供給量が減ってくるとの民間予測に触れ、「今の(10%前後の)空室率が通常の4~5%程度に戻るのに3年くらいかかると思っている。27年くらいには建設単価が若干下がってくるのではないかと希望的観測を持っている。正常な形でリスタートできるのではないか」と予想。27年以降に需給が健全化するとの見方を明かした。

日本の事業展開については「毎年500億~600億円規模でコンスタントに提供していこうというのはここ20年やってきたことなので、開発を着々と進めていく方針は変わっていない」とアピール。物流2024年問題への対応として、中継輸送の乗り換えや積み替えに対応可能な物流施設を東北や中部などのエリアに整備していくことを示した。


会見する山田氏

(写真・中島祐、本文・藤原秀行)

物流施設/不動産カテゴリの最新記事