日本郵政・根岸新社長、不適切点呼「運送事業者として存立にかかわる重大な事案」

日本郵政・根岸新社長、不適切点呼「運送事業者として存立にかかわる重大な事案」

就任後初会見で謝罪、グループ全体の体質改善が責務と強調

日本郵政の根岸一行社長は6月27日、東京都内で6月25日の就任以来、初めての記者会見に臨んだ。

根岸社長は冒頭、傘下の日本郵便の不適切点呼問題を受け「日本郵便がお客様の信頼を損ない、心配と不安をお掛けしていることを、グループを代表してあらためておわび申し上げる。(国土交通省による事業許可取り消しと安全確保命令、総務省による監督上の命令などの処分を)厳粛に受け止め、点呼の適正実施や飲酒運転の根絶へグループを挙げて取り組んでいきたい」と謝罪した。

 
 

その上で「グループのガバナンス(統治)徹底が必要な状況。点呼以外にもさまざまな法令違反事例が続発しており、最も優先して取り組む課題と捉えている。グループ全体の体質改善に取り組むことが責務と考えている」と強調した。

さらに「点呼未実施、記録簿の虚偽記載は極めて重大な法令違反と認識している。日本郵便は社会的なインフラを担っている運送事業者なので、存立にかかわる重大な事案だと受け止めている。持ち株会社としての(グループ統治の)機能をしっかりと果たしていく必要がある」と述べた。

「現時点でオペレーション上の問題は特に発生していない」

根岸社長は、国交省が不適切点呼の問題で日本郵便が抱える1t以上のトラックなど約2500台の一般貨物自動車運送事業許可を6月25日付で取り消したことについて、約2500台が担ってきた大口顧客からの集荷などを同業他社への業務委託やグループ内の軽貨物車両の活用でカバーするとあらためて説明。「現時点ではオペレーション上の問題は特に発生していない」と語った。

その上で、軽貨物車両による貨物輸送事業も不適切点呼で国交省が特別監査に踏み切り、行政処分を検討していることを踏まえ「今の時点では特段問題がなかったとしても、当然、これからお中元期などを迎えると物量の増加もあるし、委託先の事情として短い期間しかできないといったことも出てくるだろうと思う。そうした事案に1つ1つ対応することで、お客様にご迷惑をかけないのが重要だろうと思っている」と訴えた。

点呼不祥事で行政処分を受けた中、2026年度にスタートする予定の次期中期経営計画についても「物流、不動産が大きな成長の大きな柱になる」と指摘し、これまでの物流事業重視のスタンスを変えないことを表明。

「BtoCから幹線輸送へウイングを広げていくことは取り組める問題だ。点呼とも絡むが、全国のネットワーク、小型荷物はアドバンテージがあるので経営として生かさないのはナンセンス。成長戦略であるからこそ今の(点呼の)問題をきちんと解決して、小型荷物の分野に注力できる体制を築いていきたい。成長戦略の次のステップになる」と強調し、ガバナンス改善が物流分野の強化につながっていくとの見解を示した。

 
 

点呼問題の再発防止策として「紙での記録、手作業での確認がどうしても多かった。エラーもあれば意図的に隠そうということもある。デジタル的、システム的に記録できることが非常に重要と考えており、全般的に見直しを進めるべきだと思っている」と語り、点呼などの業務デジタル化が必須との考えをあらためて打ち出した。

郵便局網の統廃合についての考えを問われたのに対し、根岸社長は議論をすることはあり得ると言及した上で「局の統廃合は地元関係者との声を聴く必要もあり、かなり時間がかかる」と慎重な姿勢を表明。地方エリアで窓口営業時間の短縮などを試行していることに触れ「局間の柔軟な配置を加速させることが効果的だ」と述べた。

(藤原秀行)

災害/事故/不祥事カテゴリの最新記事