【独自取材】至高のロジメシ①三菱地所 「社食3・0」で人が集まるオフィスに変革する

【独自取材】至高のロジメシ①三菱地所 「社食3・0」で人が集まるオフィスに変革する

独創的カフェテリア「SPARKLE」が壮大な実験の場に

ロジビズ・オンラインの独自企画、新たにスタート!「至高のロジメシ」と題し、物流に関わりのある企業や人たちが食事にどんなこだわりを持ち、いかに日々の仕事を頑張る糧にしているかにフォーカスし、紹介していく予定です。

どこかで聞いたことあるタイトルだと思った方、その通り! ロジビズ・オンラインはNHKの人気番組「サラメシ」を全力でリスペクトしております!

第1回は、日本を代表する総合不動産会社の一角を占め、近年は物流施設の開発にも力を入れる三菱地所にスポットを当てた。同社は2018年に東京・大手町で本社を移転した際、オフィスの在り方や、個々の従業員の働き方に関する制度を大胆に見直し、多様な“人財”が自然に集まってコミュニケーションを促進、新しいアイデアが生まれるような環境の整備を進めている。

その一環として、カフェテリアも大幅にリニューアル。ランチタイムだけでなく、社内外の人たちが1日中、好きなタイミングで利用したいと思えるような仕掛けを施しており、同社のオフィス改革の中核を担っている。物流業界にとっても、食とオフィス空間のつながりを探る上で大いに参考になりそうだ。


三菱地所の本社が入居する「大手町パークビルディング」(同社ウェブサイトより引用)

「常に進化し、街づくりに活かすオフィス」が根幹に

三菱地所は18年1月、それまで入居していた築60年の「大手町ビルヂング」から、近隣に同社が開発した高層ビル「大手町パークビルディング」の3~6階に本社を移した。そのタイミングに合わせて、「常に進化するオフィス」「街づくりに活かすオフィス」の概念を根幹に据え、さまざまな変革に乗り出している。

例えば、オフィス内で部署単位のゾーンを決め、その中では各従業員の座席を固定しない「グループアドレス」を実施するとともに、事業担当役員の個室を廃止してスタッフとの意思疎通をより円滑に行えるようにした。

さらに、画一的なオフィスデザインを避け、随所に共有スペースを配備。靴を脱いでゆったりとくつろげる場所を配置したり、打ち合わせや食事にも使えるラウンジを設けたりとバラエティーに富んだ空間にしている。旧来のオフィスに比べると共有スペースの面積は2倍に拡大したという。

他にも、ビル内部の階段で異なるフロアをスムーズに行き来できるようにし、同一フロア間という“横の交流”だけでなく、違う階の間の“縦の交流”も促すなど、その取り組みには総合デベロッパーとして数々のオフィスビルなどの開発を手掛けてきた経験が生かされている。

併せて、前日の業務終了から翌日の業務開始まで一定の休息時間を設ける「インターバル勤務制度」の創設、仮眠室の整備、オフィス内でのフィットネスプログラム実施など、従業員の生産性向上を後押しする施策も積極的に取り入れている。


靴を脱いでくつろげる共有スペース(三菱地所プレスリリースより引用)

カフェをワークプレイスとして機能させる

そして、今回スポットを当てるのが、3階に設けたカフェテリア「SPARKLE(スパークル)」だ。一歩足を踏み入れると、従来の「社食」というイメージからは全く想像できない空間が広がっている。

まず、カフェテリアにつながる通路の壁に、大きくSPARKLEの文字とともにさまざまなメッセージが描かれ、まるで東京の表参道や代官山にあるおしゃれなお店のよう。大手町というオフィス街にいることを一瞬忘れてしまうような、スタートからして度肝を抜かれるデザインとなっている。

カフェテリアは明るい内装を採用。通常のテーブル席のほか、ブースも多く設け、打ち合わせにも気軽に使えるよう工夫している。その背景には、社食の役割にとどめるのではなく、ワークプレイスとして機能できるようにするとの哲学が存在している。食事とは別に、個人がくつろげるスペースも設置している。

従業員の健康を十二分に考えつつ、彩りにも配慮したメニューを日替わりで提供しており、毎日利用しても飽きないよう配慮。加えて、朝食を無償で提供しているというから驚きだ。同社の従業員が同伴すれば取引先企業の人にも門戸を開いており、夕刻以降はアルコールも提供。さまざまな形でコミュニケーションが活発化することを期待している。

ユニークなイベントも頻繁に開催している。三菱地所はラグビーワールドカップ2019日本大会のオフィシャルスポンサーを務めていることもあり、雰囲気を盛り上げようと大会開催前に、参加各国にちなんだ料理を出して好評を博した。また、健康意識の高まりを踏まえ、肉や卵など動物性の食材を用いない「ビーガン料理」のフェアを行ったり、同社が運営に参画している沖縄の下地島空港の旅客ターミナル施設完成に合わせて地元の食材を使った料理を振る舞ったりと、本当に多様だ。これも、多くの人が気軽に楽しく訪れる場にしたいとの思いの表れだ。

※カフェテリアの写真は今年4月撮影・現在はデザインが変わっている可能性があります

アートなデザインの入り口


明るい内装でリラックスできるよう配慮


コーヒーなども提供


バラエティーに富んだメニューをセルフで選べる

さまざまなアイデアがはじける場所に

そもそも、社食っぽくない「SPARKLE」という名前がどうして選ばれたのだろうか。三菱地所総務部ファシリティマネジメント室の佐々木詩織氏は「社員同士、あるいは社外の方が食を通じて交流することで、新しいアイデアや発想がどんどんきらめき、はじけ飛んでいってほしいというような思いを込めている」と説明する。また、スペルの中に含まれる「PARK」は、移転した新オフィス全体のデザインのコンセプトが大きな公園を想定していることと関連しているそうだ。

その思いを体現しようと仕掛けが数多く施されている独創的なカフェテリアの取り組みを、佐々木氏は「社食3・0」と表現する。社食の「1・0」がまさに旧来のイメージ通りの、食事を取る場所という機能に絞られているのに対し、「2・0」は食事や内装の質をより高めた“社員専用レストラン”と位置付けられるという。「SPARKLE」はさらに機能をアップさせ、一段上の段階に進化したとのイメージだ。

佐々木氏は「食事が上質でおいしいというだけにとどまらず、そこを契機として人が集まったり、会話が生まれたりする結び付きの部分まで捉えた場所づくりを3・0で探究していきたい。当社内のさまざまな部署やSPARKLEを運営してくださっている会社の皆さんの力も借りて、一緒に協力しながら作り上げている感じ」とその狙いを力説する。

まさに壮大な実験の場でもあるSPARKLE。利用している人たちからは、これまでのように会議室で社外の人と打ち合わせするよりもフランクに話ができるようになったなどと、前向きな反応が寄せられているという。

今後もさまざまなことにチャレンジし、人が自然と集まる空間を維持・発展させていくほか、得られた知見は同社の今後のオフィスビル開発などに反映させることを目指している。佐々木氏も「10年後もお客さまに選ばれるオフィスとはいったいどうあるべきか、自分たちが実験台となり、新たな技術を取り入れて良いものを作っていきたい」と意欲を示す。

人が集まり、創造につなげられる場とのコンセプトは、既存の社食でも工夫次第で実現できそうな、貴重なものだ。そしてロジビズ・オンラインとしては、三菱地所が手掛ける物流施設にも、SPARKLEのようなカフェテリアが登場する日がいつか来てほしいと願いたい。

(藤原秀行)

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