米o9ソリューションズ サンジブ・シドゥ共同創業者・会長インタビュー [LOGI-BIZ 2019年1月号 掲載]

米o9ソリューションズ サンジブ・シドゥ共同創業者・会長インタビュー [LOGI-BIZ 2019年1月号 掲載]

※この記事は『月刊ロジスティクス・ビジネス』2019年1月号に掲載されたインタビューを転載したものとなります。

「”3W”を回し需要と供給をシェイプしろ」

サンジブ・シドゥ共同創業者・会長

米i2テクノロジーズの創業者で需要予測に革命を起こしたカリスマが再び市場に戻ってきた。これまで属人的な経験と勘に頼るほかなかった能力を共有し、人工知能(AI)に支援させるSCMの新たなプラットフォームを構築した。グーグルやウォルマートなどの先進企業が次々と採用している。(聞き手・大矢昌浩)

ビジネスの知能指数を上げる

──人工知能(AI)やIOTはサプライチェーンをどう変えますか。

「IOTとビッグデータは可視性を与えてくれます。そしてAIはビジネスの、いわば“知能指数”を高めてくれます。よりインテリジェントな、より最適な意思決定が可能になります。SCMソリューションをもっと賢く、もっと使いやすく、もっと価値のあるものにしてくれます」

「私は1985年から88年まで米テキサス・インスツルメンツの人工知能研究所に勤務していました。88年に設立した米i2テクノロジーズもまたAIをベースにしたソフトウエア企業でした。i2は94年にインメモリデータベース(メモリーにデータを保持して処理するデータベース。ディスク型と比べ処理速度が格段に速い)で動かすソフトウエアを開発しました。それによってMRP(資材所要量計画)の計算がそれまでの100倍速くなった。しかし、当時われわれはインメモリやAIについて顧客に説明しませんでした。説明しても理解してもらえないと判断したからです」

「しかし、時代は変わりました。今やAIが誰にも知られる身近なものになりました。テクノロジーも飛躍的に進化しました。その結果、コンピュータで取り扱うことのできる知識のレベルが上がりました。スケーラビリティーと柔軟性も増しました。そして何よりソフトウエアと人間が対話できるようになりました」

「従来のソフトウエアは入力したデータを計算して回答を出すだけでした。ユーザーがソフトウエアの推奨する計画を認めないこともよくありました。『計算結果は分かった。でも私は違うやり方でやる』と。そして、結果的には人間の判断の方が正しかったということが往々にしてありました。それに対してわれわれo9ソリューションズが現在提供しているプラットフォームは、ソフトウエアが弾き出した計画についてユーザーが意見を言い、その音声をソフトウエアが自然言語として認識して、文字通り対話しながら最終的な計画を決定します」

──人間の経験や勘を計画に反映させるのですか。

「何がプラットフォームをよりインテリジェントなものにするのか。それは人間の脳です。人間の脳は、極めて優れた『知識表現』(知識を表現する方法)です。普通、部屋には必ずドアと窓がある。そのため人間の脳は、部屋に入った瞬間にドアと窓のパターンをその部屋とマッチングさせて状況を把握します。同じことをSCMに応用するのです。そのためにo9は『インメモリー・ナレッジ・グラフ』を開発しました。企業の持つ知識を容易に表現することができます」

「これまでは『エンタープライズデータモデル』が利用されてきました。しかし、データモデルは『われわれがこの製品をプロモーションしたら、人々はこの製品を買う』という当たり前の話を扱うだけです。インテリジェントではありません。そうではなく『この製品を10%値引きして売ったら需要は20%増える』と見通す──それが知識です。そうした知識は従来は人間の頭の中、あるいはその人が作ったスプレッドシートの中にしかありませんでした。それをプラットフォームに落として共有できるようにしたわけです」

「われわれはo9を立ち上げた時に、i2ユーザーでIT経験が豊富なトップ50社との取り組みを振り返り、そこに欠けていたものは何だったのかを分析しました。最大の問題は、人間の脳の中にある最高レベルの知識、ジャケットの販売であれば『この色はクリスマス前には売れない。しかし、クリスマスを過ぎるとよく売れるだろう』といった洞察力を、どうやってプラットフォーム上にコピーして、その知識を人々の頭の中にある時よりさらに価値あるものにするかということでした」

──これまでのSCMのプロセスはどこに問題がありますか。

「既におなじみの話ですが、われわれはサプライチェーン、販売、製造、財務等々の縦割りのサイロをいくつも作ってしまいました。さらにサプライチェーンの中にも配送、倉庫、調達、在庫計画などたくさんサイロがあり、それぞれ運用が分かれています。そしてコラボレーションのプロセスは非常に遅い。高度な演算装置を搭載したツールはあっても、人々がそれぞれスプレッドシートでデータをいじっていることが制約になっています。それを基にパワーポイントの資料を作って会議にかけても部署ごとに持っている数字が違うので合意できない。価値のある知識が個人やサイロ内に滞留して、可視性に欠け、協調性に乏しいことから、最適解を見つけることができず次善策に甘んじています」

──どうすれば前に進めるのでしょう。

「それを考えるには、前提として複雑さと多様性について考えないといけません。複雑さと多様性がどんどん増していることは誰もが知っています。そのためにアメリカのアマゾンは毎日5万アイテム以上の商品の価格を変更しています。他の小売りは1カ月に1回、せいぜい週1回です。エアラインは1日あるいは1時間ごとにチケットの価格を調整しています。それはアジリティ(機敏さ)の力です」

「複雑さと多様性に対応するためにまずアジリティを確保する必要があります。その上で、私は『3W』と呼んでいますが、『WHAT IS HAPPENING AND WHY(何が起きているのか、なぜ)』を把握し、『WHAT WILL HAPPEN?(このままだと次に何が起きるのか)』複数のシナリオを予測し、それに対してそれぞれ『WHAT SHOULD WE DO?(何をすべきなのか)』意思決定を下して関係者に周知するというプロセスを、高速で回し続けていくのです」

──SCMのプロセスは具体的にどう変わりますか。

「その月の売上見込みが100で、1週間に25ずつ売れるはずが、1週目に10しか売れなかった。異変を感知した時点で月次の結果を待たずにすぐ行動します。何が起きたのか。出足が悪かっただけで、2週目に穴埋めできるのか。それとも競合が強力な販促をかけたのに対応できなかったのか。あるいは供給に失敗したのか。まずはアセスメントします。その結果を基に関係者全員でソフトウエアを介してミーティングします。価格を下げる。広告を増やす。あるいはその製品に使われている部品を他の製品に使えば同じ利益を得られるので、そのまま動かないと決める。そうやって需要と供給を“シェイピング(形作る)”するんです」


インタビューに答えるサンジブ・シドゥ氏

i2の教訓を生かす

──o9の設立から既に約10年が経過しています。

「多くの人が早過ぎる段階でソフトウエアを市場に出してしまいます。その点でわれわれもi2ではいくつかミスを犯しました。そこで今回は万全を期しました。われわれは開発に着手してから5年間にわたり、共同研究に参加した2、3のユーザーを除き、顧客を持ちませんでした。ソリューションを完璧なものに作り上げるのに多くの時間をかけました。しかし、ようやく完成しました。その結果、17年にはたくさんの顧客を得ることができました。その後も3カ月ごとに有力顧客の名前を発表することができています」

「その一つが、AIの開発で世界をリードしているグーグルです。グーグルは全く性格の違う三つのビジネスにo9のプラットフォームを採用しています。一つはデータセンターの計画です。世界各地にどれだけの能力のサーバーを持てばいいか、o9のプラットフォームで『3W』を回しています。もう一つは家庭用の防犯装置やIT関連機器などハードウエアのSCMです。そして三つ目は通信事業で使用するケーブルやパーツなどの管理です」

「グーグルとは現在、新たな能力の開発も進めています。ご存じのようにグーグルは膨大な検索情報を握っています。そこで例えば、ニューヨークで『喉が痛い』という検索が急増した場合に、その需要情報をどうやって医薬品会社や流通会社に提供するか、そのデザインについて話をしています」

「ウォルマートもわれわれのクライアントです。世界最大のサプライチェーンをo9のプラットフォームに乗せて、『クリスマスツリーが欠品した。需要予測は合っていた。サプライヤーとの交渉も問題なかった。ところが輸送能力が足りずに店に届かなかった』といった3Wを回しています。そしてわれわれはグーグルと同様にウォルマートとも、やはり次のレベルの能力について話を進めています」

サンジブ・シドゥ(SANJIV SIDHU)

1957年、インド・ハイデラバード生まれ。米ケース・ウエスタン大学院卒。米テキサス・インスツルメンツ人工知能研究所を経て、88年にSCMソフトベンダーのi2テクノロジーズを設立。2009年、同社をJDAソフトウェアに売却。同年、o9ソリューションズを設立。現在に至る。

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