LOGI-BIZ記事レビュー・箸休め編②ベテラン社員を若手ら指導の現場教育担当に

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ヨコレイがノウハウ伝承へ独自制度展開

※この記事は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2014年11月号で紹介したものを一部修正の上、再掲載しています。役職名や組織名などの内容は雑誌発刊当時から変わっている場合があります。あらかじめご了承ください。

冷蔵倉庫大手の横浜冷凍(ヨコレイ)は、ベテラン社員を現場教育担当として全国に配置し、若手社員らを指導する独自の制度を展開している。培ってきた作業の安全維持や効率化などのノウハウを着実に伝承し、現場の作業水準や荷物の保管効率を向上させ事業の競争力を強化する狙いだ。
制度開始から約1年半が経過し、現場作業中の事故が大きく減るなど、成果も出てきている。

「現場の父親的存在」として拠点こまめに回る

ヨコレイが独自の制度をスタートしたのは2013年2月。新組織「現場力向上推進委員会」を設置し、再雇用された50~60歳代のシニア社員11人が委員となって活動を開始した。委員の任期は特に決めていないという。

同社は正社員が現場作業を担当することで作業ノウハウを蓄積する「社員オペレーション」を原則としている。これまでにも外部の講師を招いた講習会などを通じて事故防止やオペレーションの品質向上に努めてきた。

しかし、同委員会を担当している井上祐司取締役冷蔵事業本部長(物流通関部長兼務)(編集部注・現在は常務取締役)は「どうしても上から教えるという形になりがちで、社員にどれだけ浸透しているのかが疑問だった。従来の教育に加え、現場目線で本当に若手の人たちと悩みを共有していける教育を導入することが必要だと感じた」と振り返る。

そうした危機意識が原動力となり、新たな制度の導入に踏み切った。全国6ブロックごとに委員を配置し、ブロック内の拠点をこまめに回って、冷蔵倉庫や工場内での効率的な荷物の積み降ろし方法などを分かりやすく伝授。委員から社員へのアドバイスにとどまらず、若手社員らから相談があれば、親身になって対応するよう心掛けている。まさに「現場の父親的存在」(井上取締役)として積極的に活動している。

各委員の間では、グループウエアの掲示板を使って情報を共有。あるブロックで聞かれた悩みを他のブロックにも伝えて参考にしてもらう、といった取り組みを続けている。


現場力向上推進委員会のメンバーが若手社員らにアドバイス(ヨコレイ提供)

作業中の事故が前年同期より4割減少

井上取締役は「これまではマニュアルや手順書の内容に沿って作業を進めるという指導だったが、委員が全国を回って詳しく教えることで、そもそもマニュアルや手順書に書かれている作業はどういう意味を持つのかという根本的な部分の理解が深まってきた」と歓迎する。

自身も委員を務め、委員会のメンバーの取りまとめ役を務める冷蔵事業本部の三浦宏之氏は「マニュアルや手順書に盛り込めない細かい部分を現場で指導していく重要性を感じている」と言う。

例えば、保管しているイカなどの魚介類を冷凍庫から出して水を掛けて、すぐにまた冷凍庫に戻す作業がある。そうすることでイカなどの表面にグレーズと呼ばれる薄い氷の膜を作り、品質劣化を防ぐ狙いがある。しかし、現場の社員はその作業の意味を必ずしも理解できてはいなかったそうだ。委員のアドバイスで状況が徐々に改善されていった。

三浦氏は「作業の意味が分かれば、水を掛けた後すぐに魚介類を冷凍庫に戻さなければいけないということがしっかりと理解できる。委員が現場でその都度教えていくことで知識やノウハウをしっかりと受け継いでいく。それがわれわれの大きな役割だ」と話す。最近開いた委員全員の会合で、基本の徹底が重要だと再確認しており、今後の指導にも反映させていく方針だ。

委員会がスタートした後、13年10月~14年8月末までの作業中の事故件数は前年同期より4割程度減少した。独自制度の効果が着々と表れてきているようだ。井上、三浦の両氏は、今後委員間の意思疎通を従来以上に緊密にするとともに、社員への情報発信も進めていく考えだ。


井上氏(左)と三浦氏

(藤原秀行)

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