【独自取材】「報酬早期支払い」でドライバーの資金繰り支え、人手不足解消後押し

【独自取材】「報酬早期支払い」でドライバーの資金繰り支え、人手不足解消後押し

スタートアップのインベストデザイン、独自決済サービスを物流業界に積極提案

独自の決済サービス「ラグレス(LagLess)」を展開しているスタートアップ企業のインベストデザイン(東京)は、主力の建築業界に加え、新たに物流業界へのサービス提供拡大を図っている。

ラグレスは建設会社が下請けの協力会社に支払う毎月の工事費を、協力会社が希望すれば通常より前倒ししたタイミングでインベストデザインが代わりして口座に入金するのが特徴。建築業界は代金の支払いサイトが長くなる傾向にあるため、前倒しの入金を可能にすることで有力な協力会社をつなぎとめることが可能になるとメリットを説明している。

建築業界向けには既に累計で50億円規模の早期支払いを実施するなど、着実に利用が広がり、事業の黒字化を果たした。今年2月には、物流業界に特化した求職マッチングサイト「ロジデリ」を展開しているプラットイン(大阪市)との連携を発表した。運送会社などは建築業界と同じく協力会社への代金支払いサイトが長期化しがちなことなどから、インベストデザインは「当社のサービスがお役に立てる余地は大きい」と期待を込めている。

申し込みから最短5営業日で受け取り可能に

ラグレスは建設会社側に一切負担が発生せず、インベストデザインが建設会社の与信を行った上で協力会社から手数料として5%を受け取るビジネスモデルのため、建設会社にとってはサービスを利用しやすい。協力会社も設備投資などで急きょ資金が必要になった場合、金融機関の融資は時間や手間が掛かる一方、ラグレスを使えば煩雑な手続きなく、通常よりも早く代金を受け取ることができる。

協力会社は毎月必ず使用を義務付けられているわけではなく、あくまで必要なタイミングでのみラグレスを使えるよう配慮。自社の「ラグレス」ブランドで提供するほか、企業側の要望があれば決済のプラットフォームを新たなブランドで展開するOEMにも応じている。

インベストデザインは建築業界も人手不足が深刻化している中、「支払いサイトの柔軟化を実現することで、協力会社から選ばれる理由となる。技術力を持つなど有望な協力会社の成長支援にもつながる」と強調する。


ラグレスの仕組み(インベストデザイン提供)※クリックで拡大

プラットインとの連携では、同社のマッチングサイト「ロデリ」向けにOEMブランド「ロジデリペイ」として早払いサービスを提供。物流会社は通常通りのサイトでトラックドライバーに代金を支払う一方、ドライバーは早期支払いを希望すれば通常より早く、最短5営業日で代金を受け取ることが可能だ。手数料は5%と設定しており、ドライバーは早払いを希望する月はパソコンやスマートフォンから簡単に手続きできるようにしている。

ロジデリにとっても、ロジデリでドライバーを募集する企業はロジデリペイを使えることを全面に打ち出し、優秀な人材を確保しやすくなると期待されている。インベストデザインはロジデリとの連携を物流業界での普及の足掛かりとしていきたい考えだ。ラグレスが協力会社に支払う月当たりの金額の残高は現状の5億円から10億~15億円規模へ高めていくことを視野に入れている。

既にシステムエンジニア(SE)などの分野でもラグレス利用を模索する動きがあるという。支払いサイトが長く、人手不足に悩んでいる業界には親和性が高そうなサービスだ。インベストデザインは当面、建築業界と物流業界をメーンに据えつつ、他の業界からの要望にも柔軟に応えていくことを考えている。

新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、経済にも大きな影響を及ぼすことが見込まれている。インベストデザインはそうした外部環境の変化を踏まえ、3月には建築業界の早期支払い利用手数料を、条件を満たした場合は半額とすることを発表した。感染拡大で工事が遅延し資金調達が必要になるなどの事態に対応するのが狙い。現下のような混乱した時期にこそ、ラグレスが真価を発揮することが期待されそうだ。


プラットインの高田隼渡代表取締役(左)とインベストデザインの高田悠一代表取締役(両社提供)

(藤原秀行)

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