「好条件出やすい今M&Aに動くことが重要」と指摘
日本M&Aセンターは9月29日、東京都内の本社で、運送・物流事業者を対象とした小規模セミナーを開催した。同社の担当者が後継者難に悩み、別の企業への譲渡を考える創業者が多くなっている運送・物流業界の潮流を報告。
そうした現状を踏まえ、好条件が出やすい今こそ優良企業を譲り受けるなどのM&Aに動くことが重要と指摘し、成長継続のためにも積極的に検討するよう訴えた。
セミナーはまず、同社業界再編部で運送・物流チームの責任者を務める山本夢人シニアディールマネージャーが講演した。再編の法則として、業界全体で6万拠点(店舗)に近づくと適正規模に調整する動きが起こると説明。事業者数が6万を超す運送業界もその法則に合致しており、「3~5年後に再編のピークが来る」と推測した。
山本氏は運送・物流業界のM&Aの傾向に関し、従来の後継者不在や先行き不安に加え、最近は一層の発展を図るため有望な他社を取得したり、大手の傘下に入ってパートナーとなったりする“戦略的事業承継”が増えていると分析。「好条件が出やすい今のうちに、積極的に(自社の)譲渡に動くことが重要」とアピールした。
自社の譲渡に成功した経営者からは「ドライバー確保に悩むことがなくなった」「荷主への交渉力が付き、嫌な仕事は断れるようになった」「相続の心配が解消された」「親会社と協力することで人やトラックのロス、季節性の心配がなくなった」といった歓迎の声が挙がっているという。
同社の仲介により企業の譲り受けに成功した事業者の約7割が売上高10億~100億円の中堅企業と言及。取引先の増加、ドライバーや拠点増加による経営効率化、新規人材採用の可能性アップ、他事業との連携強化といったメリットがあると強調した。
他社からの譲り受け案件を成功させる秘訣として①決断が早い②スケジュールが柔軟③資金調達の事前準備が整っている④ニーズが明確-ことなどを挙げ、「自らも譲り受け先として選ばれる企業になることが必要」と求めた。
より規模大きい同業の傘下入りし、1年で黒字化に成功のケースも
続いて、同社業界再編部の運送・物流チームに所属する一色翔太氏が、運送・物流業界のM&Aの成功事例を紹介した。一色氏は冒頭、「M&Aというと、まだ身売りとか赤字でどうしようもないから売り渡してしまうといったネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれないが、現状はむしろそうではない前向きな事例の方がとても多い」と力説した。
同社が携わった具体的な案件として、岩手県の運送会社が、同県を地盤とする中堅運送会社の傘下に入ることで後継者不在を解消すると同時に、経営基盤を強化して関東にも新規に進出できたケース、赤字続きに悩まされていた福島県の運送会社が、より規模の大きい同業のグループ入りして営業力を高め、わずか1年で黒字に転換できたケースといった6つの事例を細かくプレゼンテーションした。
(藤原秀行)
日本M&Aセンターのセミナー会場
講演する山本氏
成功事例を紹介する一色氏