【独自取材】先進物流施設、コロナ禍でも需要は衰えず

【独自取材】先進物流施設、コロナ禍でも需要は衰えず

プロロジス・山田社長がインタビューで予測、「通販利用拡大で社会が重要性再認識」と指摘

プロロジスの山田御酒社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

山田社長は新型コロナウイルスの感染拡大下でも物流施設開発事業に大きな支障は出ていないと説明。外出自粛に伴うインターネット通販利用増加などで物流の持つ重要性が社会に再認識されていることや、サプライチェーンが停滞しないよう在り方を見直す動きが出ていることを踏まえ、コロナ禍でも先進的な物流施設の需要が衰えず、引き続き活況が見込まれると前向きな予測を示した。

日本国内で開発に着手したか既に完成した物流施設が100棟に達したことに関連し、今後は人手不足を背景に、物流施設の省人化・無人化のニーズが一段と拡大していくと展望。デベロッパーとしてもオペレーション機械化などの要請に応える姿勢を強調した。主なやり取りは以下の通り。


プロロジス・山田社長(2019年、撮影・中島祐)

開発を絞る可能性はなし

――新型コロナウイルスの感染拡大で国内外の経済が打撃を受けています。御社が手掛けている賃貸物流施設の開発に影響は出ていますか。
「経済が好調な時は、物流施設は他のアセットに比べれば地味な印象ですが、今回のように何かネガティブなイベントが起きた時でも、賃貸借の契約期間が非常に長いこともあって、もともとテナント退去といった形で即影響が出るということはあまりないんです。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛が広がったため、通販やECの利用が非常に伸び、食事や日用品の宅配、買い物代行といったサービスも注目されています。そのことを通じて物流の価値、重要性が再認識されています。多くの方が通販などのサービスをお使いになる習慣を身に付けられたと思いますので、感染がある程度収束しても一気に通販などの需要が落ち込むことはなく、継続していくのではないでしょうか」
「加えて感染拡大を受け、やはり製造業などのサプライチェーンの見直しが今後間違いなく話題になってくるでしょう。東日本大震災の時にも災害で事業がストップするリスクを回避するため生産拠点や倉庫の配置を集約型から分散型に変革するといった話が多く聞かれました。今回も部品の調達が滞って生産拠点が一時稼働をストップするなどの事態が発生しています。サプライチェーンの見直しは物流施設のネットワークをどう構築するかという話にもつながりますから、われわれにとって新しい事業機会が出てくるのではないかとみています」

――既に物流施設への新たな引き合いは出てきていますか。
「現状は多くのお客さまにとって新型コロナウイルスの感染拡大による影響に対処していくことが最優先だと思いますが、事態がもう少し落ち着いてきたら、おそらく今年の夏すぎくらいから、少しずつ新たな物流施設を検討するといった話が出てくるのではないかと思います」

――御社が手掛けている物流施設開発に遅れは出ていますか。
「それは全くありません。一時期、建設会社さんが感染リスクを抑えるために工事を中断される動きが出ましたが、大型連休明けからは通常の状態に戻っています。幸運なことに当社が開発している施設の建設現場で感染された方が出たという話も現時点で聞いていません」

――入居を取りやめるという動きもありませんか。
「そうした話はありませんが、グローバル規模で事業を展開されていて、世界中で弊社とお付き合いいただいている大手企業からは、賃料の減額要請が来ることがあります。ただ、それは経済情勢が悪化すれば全ての物流施設オーナーへ自動的に減額を要請することになっているようですね。少なくとも深刻な話は1つも聞いていません」

――物流施設市場全体でも?
「細かくヒアリングしているわけではないですが、あまりそういう話は聞かないですね」

――新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化の影響でBtoBの荷物が減っていると聞きます。そのあたりは物流施設需要にとって逆風になりませんか。
「確かに中国から入ってくるはずの輸入品が一時滞るなどして、物自体が減少したという影響はあったようですが、現状では正常に戻りつつありますし、そこまで大きな影響はないのではないか。ここ2~3カ月を見ても相変わらず大きな物流施設で新規契約がどんどん決まっています」

――EC事業者から新たな物流施設が欲しいというような話は出ていますか。
「これから間違いなく出てくると思います。小売業の方々はコロナの影響で長期間実店舗を閉めざるを得ず、全く商品を販売することができなくなったので、どうやって売ればいいのかと考えた場合、もうECしかありませんでした。従来はまず実店舗があり、その補完的な役割としてECやオンラインを捉えておられる方が多かったと思いますが、ECの売り上げが2倍、3倍と増えたことで意識が変わってくるでしょう」
「もちろん実店舗がオープンすればお客さまがそちらに戻っていくという動きもあるとは思いますが、変わらずにオンラインをお使いになるという方も増えていくでしょう。そういう意味では小売業界も以前よりもっと強くオンラインで物を売ることを意識されるのではないか。そうなると当然ながら、物を運ぶ人や保管する場所が必要になりますから、物流業界もプラスの影響を受けると考えています」

――今後物流施設開発を絞る可能性はありますか。
「今のところは全くありません。当社でもグローバルでは感染が拡大してきた3月から1カ月くらい、さすがにちょっと様子を見ようというスタンスにはなりました。コロナの状況を踏まえれば当然の判断だったと思います。しかし、その期間中も日本からは大規模開発の案件を投資委員会に諮っていました。今はもう欧米でも通常の状態に戻ってきています」

「倉庫の完全無人化」求める動きが強まる

――日本で今後、開発に着手する案件はどういったものがありますか。
「兵庫県猪名川町で大規模なマルチテナント型2棟を開発するプロジェクトは、このほど2棟とも着工しました。他には神戸市で新たな案件を年内にもスタートする見通しです。九州でもいくつか案件の準備を進めていて、おそらく年内にはそのうちの1つくらいがスタートできるのではないかと考えています」

――お話のあった猪名川のプロジェクトは2棟で延べ床面積が計37万6800平方メートルにも及ぶ大規模なものです。進捗はいかがですか。
「大変ありがたいことに実はこの2棟に関しては、賃貸面積全体の約75%で既に入居されるお客さまが決まっています。めどが付いているというのではなく、契約済みです。めどという意味ではほぼ全てのフロアが埋まっていると申し上げてもいいくらいです。当初は大阪や神戸から離れた猪名川ということで不安を感じておられた方もいらっしゃいましたが、現地を訪れて実際にロケーションをご覧になると、新名神高速道路の川西ICを降りてすぐという立地を評価していただけます。便利な割には、地元の猪名川町などのご協力で開発用地を割安で仕入れられたこともあり、賃料が高くない。プロジェクトとしては非常にうまく進んでいます」
「川西ICの周辺エリアではこれから物流施設の開発が進んでいくのではないでしょうか。関西圏も物流施設の需要は旺盛ですが、内陸部では当社の物件以外にも物流施設の開発が進み、適当な用地を見つけにくくなっている。さらに、物流施設が集中することで労働力を集めるのも難しくなってきています。そういう意味では、関西圏では開発エリアを分散しなければいけないので、新名神の西側にポテンシャルが出てくるでしょう」


「プロロジスパーク猪名川1・2」の完成イメージ(プロロジス提供)

――新たな開発エリアという意味では、首都圏で注目されているところはありますか。
「当社は数年前から茨城県つくば市に着目し、自ら多く物流施設を開発してきました。圏央道や常磐道を利用できるエリアが今後大きなマーケットになっていくのではないでしょうか。つくばではZOZOさん向けの物流施設を複数開発していますが、ZOZOの方々はつくばの雇用環境がすごく良いと評価されています。都心より少ない採用コストで人が集まり、離職率も非常に低いそうです。少子高齢化で物流施設も機械化が不可欠ですが、現状ではまだまだ数百人単位で労働力が求められますので、優秀な人材を集められるつくば市は非常に魅力的です。市からも雇用創出に関して感謝いただいており、われわれとしても大変うれしいですね」
「物流施設開発に新規参入された方々にとっては、都心から離れたつくばでの開発には二の足を踏まれるでしょうが、当社にとっては何の問題もありません。電車のアクセスも良いですし、つくばとその周辺エリアは引き続き注目していきたいと思います」

――先ほどお話があった猪名川の物流施設2棟に着工したことで、御社が1999年に日本へ進出して以降、国内で手掛けてきた物件がちょうど100棟に到達しました。これまでの開発事業の歩みを振り返ってどう感じますか。
「リーマンショック後の2010年から今までの10年間はまさにずっと右肩上がりでした。非常に恵まれていたのではないかと思います。物流施設という不動産のカテゴリーは随分市場規模も大きくなりました。関係者の皆さまのおかげで、メディアでもロジスティクスやサプライチェーンといった物流に関わる言葉が普通に定着していますし、一気に世の中の認知を得たと思いますね。われわれが日本で事業を始めた当初は、そもそも今のような賃貸用物流施設自体がありませんでしたから」

――今後の物流施設開発はどのような方向に進んでいくとみていますか。
「世の中が求める物流施設の在り方は変わってくるでしょう。究極は完全無人化です。少子高齢化に歯止めが掛からない中では、間違いなくその方向に進んでいくのではないか。先ほどもお話しましたが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大ではマスクや消毒薬がなくなるといった深刻な事態に見舞われました。今まで人件費が安い海外に製造拠点を集中させ、部品なども調達してきたことが果たして良かったのかどうか、との議論が出てきていますね。そうなればものづくりの拠点が日本に回帰することもあり得るでしょうし、物の流れが変わってきます。そこで省人化・無人化という技術をさらに積極的に活用する方向へ進んでいくのではないか」
「世間で言われているDX(デジタルトランスフォーメーション)を果たす上で物流施設はどのような役割を担うのか、われわれのようなデベロッパーだけでなく3PL事業を手掛ける物流企業やメーカーなどの方々と一緒になって考えていくべきことだと思います。われわれのアドバンテージは日本だけではく欧米などでも事業を展開していることですから、総合力を発揮してDXに貢献していきたい。当社でも今、30歳前後の人たちがどんどん入社しています。そうした若い人たちが中心となって物流業界におけるDXを実現していってくれることに期待しています」

(藤原秀行)

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