直近はコロナの影響で伸び鈍化、卸・小売業も数で製造業や運輸・郵便業と依然差詰まらず
政府が物流事業者や荷主企業と連携してトラックドライバーの就労環境改善などを目指す「ホワイト物流」推進運動に賛同し、自主行動宣言を提出した企業・組合・団体がこのほど、1000の大台に到達した。2019年4月に運動を本格的に開始して以来、1年2カ月余りでの到達となった。
政府はホワイト物流推進運動を始めるのに際して、上場企業約4000社と、全国47都道府県ごとに売上高上位50社ほどをチョイスした約2300社の経営トップに直接文書で協力を要請した。そうした要請先企業の15%程度が運動への賛同を決めたことになる。
ただ、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、新規で賛同する企業や組合、団体の伸びが鈍化。今年に入って、それまでは1カ月当たり50~60台で推移していたが、4月は37、5月は17とブレーキがかかっている。ホワイト物流運動の実効性を上げるには賛同者を増やすことが大前提だけに、現状のペースから上向く兆しが見えなければ今後政府が何らかの対応を迫られる可能性がある。
また、5月末時点で賛同している主要業種のうち、324の製造業や489の運輸・郵便業に比べ、卸・小売業は95と数の面で見劣りがする状態が続いている。着荷主となることが多い卸・小売業で賛同がより広がれば、荷降ろしの待ち時間解消などの効果が高まると期待できるため、参加をより強く働き掛けていくことがあらためて求められている。
さらに、ホワイト物流への賛同が言いっぱなしのポーズにならないよう、参加数を引き続き増やすことと併せて、運動の進捗状況や実際の効果をいかに可視化していくかという点についても工夫が必要。賛同したことが何らかのメリットにつながっていると荷主企業が体感できなければ、もともと運動自体には法的な強制力がないだけに、尻すぼみに終わる恐れが否定できない。
政府はホワイト物流推進運動を紹介したパンフレットで「優良な取り組みは運動のポータルサイトで紹介する」と表明している。他にも賛同企業が運動を継続しようとするインセンティブを考案していくことが重要になってきそうだ。
(藤原秀行)