清掃の自動化でスタッフの感染リスク抑制
アイリス電工が「Whiz」を6カ月無償で提供
アイリスオーヤマグループのアイリス電工が、ソフトバンクロボティクスのAI清掃ロボット「Whiz」を月額4万円のサブスクリプション方式で提供する。当初6カ月間無料の特典付きで、契約はいつでもON/OFFできる。既存センターに導入して初日から運用することが可能だ。ノーリスクで清掃業務の自動化・省人化が図れる。(本誌編集部)
床の粉塵からウイルスが拡散
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、施設清掃に対する要求が大きく変化している。これまで清掃業務はコスト削減に管理の主眼が置かれていた。しかし、“ウィズコロナ”が始まって以来、施設の清潔さを科学的に担保することが、オペレーションを継続するための最優先事項に浮上した。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は4月、新型コロナ感染者の受け入れのため中国・武漢に急遽建設された火神山医院の施設内を調査した論文を、同センターのオンライン専門誌に掲載した。それによると、特に多くのコロナウイルスが検出されたのは、患者のマスクや医療従事者の手袋などではなく、廊下や病室などの床、そして換気扇のフィルターだった。医師や看護師の靴の裏にも多く付着していた。医療従事者が動き回ることで床に蓄積されたウイルスが空中に舞い上がり、フィルターに吸い込まれたと考えられる。
従って、床面の清掃を徹底すれば感染リスクは抑制できる。しかし、感染者と接触する恐れのあるレッドゾーンで清掃業務にあたる作業員を新たに確保するのは容易ではない。そのため国内外の病院や介護施設、軽症者を受け入れる宿泊施設などで、床掃除ロボットの導入が一気に広がっている。
物流センターで庫内作業にあたる作業員も、医療従事者と同様のエッセンシャルワーカーだ。しかし、物流現場では人手不足が加速しており、「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」を重視してきた施設でも清掃業務に割ける時間は以前より短くなっているのが実情だ。
そこでアイリスオーヤマグループのアイリス電工では、物流センターを対象に、ソフトバンクロボティクスのAI清掃ロボット「Whiz(ウィズ)」の導入を提案している。
ソフトバンクロボティクスのAI清掃ロボット「Whiz(ウィズ)」
Whizは施設の床面の除塵を目的としたバキューム式の業務用ロボット掃除機だ。本体サイズは高さ653㎜×幅455㎜(ハンドル収納時)。最初に人手でWhizのハンドルを押して清掃ルートを一巡すれば設定(ティーチング)は完了。次回からはスタートボタンを押すだけで自律走行して清掃を行う。庫内レイアウトの変更にも簡単に対応できる。
自動運転用のLiDAR(ライダー)センサーと3Dカメラを搭載し、通路に仮置きした荷物など、ルート設定時に存在しなかった障害物も自動感知して迂回ルートを判断する。近くに人の往来があれば一時停止して衝突を回避、安全を確認してから作業を再開する。
清掃能力は1時間当たり500平米。人手とほぼ同等のスピードだ。作業の進捗はスマートフォンと同じ4GLTEの回線を使ってアプリなどでリアルタイムに遠隔管理できる。作業中のロボットを監視している必要はなく、庫内スタッフは清掃業務の負担から解放される。付加価値業務や「5S」本来の活動に時間が割けるようになる。
しかも、Whizで清掃することで床の微生物量を人手の清掃と比較して半分以下に抑えることができる。床面の新型コロナウイルスを大幅に減少させる効果も確認されている。清掃時に粉塵を舞い上げる量は、人手の8分の1以下。空気中に浮遊するトータルの細菌量は約5分の1に減少する(図)。庫内スタッフを感染から守ることができる。
Whiz稼働時の空気中の浮遊菌量測定結果
解約縛りなし、ノーリスクでロボティクス
ソフトバンクロボティクスにとってWhizは人型ロボット「Pepper(ペッパー)」に続き2番目に市場化した製品だ。欧米では人が乗るタイプの掃除ロボットが多く実用化され、大規模施設への普及が始まっている。しかし、日本で大型ロボットを導入できる施設は限られている。そこでソフトバンクロボティクスは人が押して動かすウォークビハインド式の小型ロボットにフォーカスして製品化した。
同社とWhizの販売代理店契約を結んだアイリス電工は、その提供方法に「RaaS(Robot as a Service)」と呼ばれるサブスクリプション方式を採用した。1台当たり1カ月4万円の利用料を月単位で課金する。導入から6カ月間の利用料を無料にするキャンペーンを行っている。無料期間が終了した後の契約の縛りも設けていない。
アイリス電工の吉田豊副社長はその狙いを「月額4万円を日給にすれば約1300円。それで倉庫の清掃業務を自動化できてコロナ対策にもなる。十分魅力的なソリューションだと考えている。それでも人からロボットに移行するのは、文化的、心理的なハードルがあるのも事実。そこで無料でWhizを貸し出し、まずはロボティクスを体験してもらうことにした」と語る。
アイリス電工 吉田 豊 副社長
従来の業務用ロボットは、システムの整備やオペレーションの設計などの受け入れ準備に最低でも数カ月の時間と手間がかかった。イニシャルコストは高額で、リース方式も5年程度の長期契約が一般的であるため、ユーザーが導入に二の足を踏む一因となっていた。Whizは事前の準備が不要で、アイリス電工のプランを使えば投資リスクもないため、すぐに導入してその効果を確認できる。
2020年1月に同社がサブスク方式のサービスプランをスタートして以来、予想を大幅に上回る反響を得ている。現在ではソフトバンクロボティクスが全世界に供給するWhizの約25%をアイリス電工の取り扱いが占め、3月末時点で販売代理店として最大手に躍り出た。
ソフトバンクロボティクスの吉田健一常務執行役員 Chief Business Officerは「病院やホテル、店舗などと同様に、これからは物流センターの清掃業務にも、アフターコロナの“ニューノーマル(新常態)”とも言える新しい標準が設定されることになる。それをアイリス電工、そして物流業界の皆さんと一緒になって作っていきたい」と意欲を見せている。
ソフトバンクロボティクス 吉田健一常務執行役員
Whizの仕様概要
本体重量:約30kg(バッテリー含まない)
清掃能力※:約500m²/時間
連続稼働※:約3時間(ノーマルモード)
集塵容積:4.0L(紙パック)
充電時間:約4時間
※使用環境により異なる場合がある。
お問い合わせ先
「Whiz」6カ月無料キャンペーン お問い合わせ先
https://www.iris-denko.co.jp/ai-whiz/contact/?q=3&from=biz
TEL:03-5843-7796
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