東京・東葛西でも検討、「城東地区ナンバーワン」の存在目指す
物流施設開発に新規参入した総合不動産業のアライプロバンス(東京・墨田区江東橋)の新井嘉喜雄社長と新井太郎専務、田草川直樹取締役はこのほど、ロジビズ・オンラインのインタビューに応じた。
新井社長らは第1号案件として千葉県浦安市の東京ディズニーリゾートに程近いエリアでマルチテナント型物流施設「(仮称)浦安市港物流センター」の開発プロジェクトを本格的に進めていることを説明。今後も不動産事業を展開する上で物流施設が中軸を占めるとの見解を示した。
併せて、新型コロナウイルスの感染拡大で経済情勢は厳しいが、先進的な機能を持つ物流施設は引き続き需要が見込まれると展望。同社が前身の金属加工業時代から長年事業を続け、環境を熟知している城東エリアや東京湾岸エリアで積極的に優良な開発用地を選定していく姿勢を強調した。
「(仮称)浦安市港物流センター」の完成イメージ(アライプロバンス提供)※クリックで拡大
スタイリッシュな設計採用、通勤しやすさにも配慮
同社の前身は1903年創業の金属加工業「新井鉄工所」で、油井管の継ぎ手(カップリング)を得意としてきたが、経営環境の変化などを踏まえ2016年に工場の稼働を終了。以前から保有してきた不動産を生かした総合不動産業への転換を進めており、このほど現社名へ変更した。第2の創業との思いを広く示すため、不動産などの資産を指す「プロパティ」と前進を表す「アドバンス」を組み合わせた造語「プロバンス」を採用したという。
アライプロバンスのロゴマーク(同社提供)
アライプロバンスの本社(中島祐撮影)
アライプロバンスの本社エントランス(中島祐撮影)
新井社長は「われわれが受け継いできた不動産という貴重な財産があり、総合不動産を展開する上で有利だと判断した」と経緯を説明。新たなスタートを切った中で社会に不可欠な機能として重要度が増している物流へ貢献したいとの思いを語った。
新井専務は物流施設に着目した背景として、もともと千葉県浦安市に旧工場跡地を所有していたことに触れ、「広大な用地を都内に持っていること自体が奇跡のようだった。こま切れに使ったのではありふれた開発になってしまうので、いかに有効活用できるかを熟慮した結果、物流業界が激変、激動の時代にあり、eコマースの発達などで重要度が飛躍的に増していると痛感し、社会のお役に立てるのは物流施設だとの結論に達した」と語った。
インタビューに応じる新井社長
第1号案件は首都高湾岸線の浦安ICから約3キロメートル、JR京葉線の新浦安駅、舞浜駅から約3キロメートルと利便性の高いエリアに位置。近隣では物流施設の供給自体、近年はほとんどなかっただけに新井社長らは希少性が極めて高く、ラストワンマイルの配送効率化などに貢献できると見込んでいる。地上4階建て、延べ床面積は約3・5万平方メートルを計画し、最大4テナントが利用可能とする予定。竣工は21年10月の見通し。シービーアールイー(CBRE)がパートナーとして企画やリーシングなどを支援している。
新井専務は「都市型物流施設としてスタイリッシュな設計を採用しているほか、敷地内にバス待合所を整備して通勤しやすくするなど、従業員の方々が働きやすい施設にしていく」と解説。既に引き合いが活発と説明し、早期のリースアップに強い自信を示した。新井社長も「バス待合所の整備は非常に良い考えだと思う。長年鉄工所を経営する中で働きやすさを確保することが重要と痛感しており、物流施設でも細かな配慮が大切」と持論を展開した。
アライプロバンスは併せて、東京・江戸川区東葛西に所有している工場跡地で不動産開発を進める構想を立てており、大規模なマルチテナント型物流施設の建設を中心に検討を続けている。新井専務は「江戸川に近いことを利用して、水に親しめるような施設と組み合わせて開発するなど、さまざまなアイデアを実行していきたい」と意気込みを見せた。
新井専務
決断早いことが競争力の源泉に
ゼネコンや不動産鑑定会社などで数々の不動産事業に携わってきた経験を持ち、昨年2月に入社した田草川取締役は今後の成長戦略に関し、物流施設以外のアセットも手掛けつつ、総合不動産業として自社開発に加え、物件の売買や仲介、コンサルティング、アセットマネジメント、プロパティマネジメントといった多様な業務を手掛けていけるようノウハウを着実に蓄積していく方針を表明。「まずは浦安と東葛西の開発に注力して無事に終わらせ、その次の展開につなげていきたい。浦安でCBREさんのお力も借りて物流施設開発のノウハウを十分学ばせていただきたい」と語った。
新井社長は「事業拡大と合わせて人材の確保も重要」と指摘、将来をにらみ採用活動に注力する考えをのぞかせた。新井専務は「錦糸町を地盤とし、城東エリアで120年近く事業を続けてきており、地元のさまざまな関係者の方々と強い関係を築いてきたことが当社のアドバンテージ。このエリアの歴史や文化も知り尽くしている。人脈などの強みを最大限発揮し、得意中の得意としている城東や湾岸エリアで優良な案件を掘り起こしていきたい」と述べた。
物流施設に関しては、新井専務は「郊外で大型施設を手掛けるだけでなく、都心部でコンパクトな施設を開発していくなど、さまざまなことを検討し、今までにないようなものも試していきたい。当社はオーナー企業だけに決断が早く本音で議論できることも、これだけ環境変化が激しい時代には競争力の源泉になる」との見解を示した。
田草川取締役は冷凍・冷蔵対応の物流施設やニーズが増えている危険物倉庫にも機会があればトライしたいとの姿勢をアピール。「城東エリアでも優れた用地はまだまだ存在している」と前向きな見方を明らかにした。新井専務も「これから食品関係のeコマースがさらに伸びていくとみられているだけに、冷凍・冷蔵対応は考えていきたい」と力説した。
アライプロバンスの将来の目標として、新井専務は「城東と言えばアライというくらいの存在感を示せるようになりたい。今後も物流施設は事業の中で相当のパーセンテージを占めるだろう。城東エリアナンバーワンの総合不動産会社を目指していく」と強調。鉄工所時代の売上高規模を今後10年程度で再び達成していきたいとの思いを明らかにした。
田草川取締役
(藤原秀行)