ICU内巡回など担当し感染症リスク低減も図る、名古屋大医学部付属病院で実証研究
大成建設と大和ハウス工業傘下で情報システム構築などを手掛けるモノプラスは、自律走行が可能なAI(人工知能)搭載の米国製多目的ロボット「temi(テミ)」を活用した病院内の業務効率化支援に乗り出した。
temiが集中治療室(ICU)内を巡回して患者の様子をカメラで確認、医師や看護師が急な症状悪化にも素早く対応できるようにすることなどを想定。来院者への施設案内などにも対応させる方向だ。temiにはモノプラスが独自に開発したソフトウエア「BuddyBot(バディボット)」を搭載し、パソコンやモバイル端末から動作プログラムを容易に作成・修正できるようにする。
今年8月から10月までの間、名古屋市の名古屋大医学部付属病院にtemi2台を投入して実証研究を実施、利用できる業務の範囲などを確認した上で、2021年度中の実用化を目指す。
両社が8月20日に正式発表した。少子高齢化で医師や看護ら病院スタッフの人手不足が深刻になる一方、後期高齢者の増加で医療機関受診の機会がさらに増えると見込まれているため、両社はtemiを生かすことで院内の業務を効率化するとともに医療の安全確保とサービス向上につなげたい考え。新型コロナウイルスの感染拡大で接触の機会を減らすことが強く求められているのを踏まえ、ロボットを現場に投入して感染リスクの低減を図る狙いもある。
両社は医療機関に加え、将来はオフィスや工場、物流施設、商業施設、介護施設などでもtemiとBuddyBotを駆使して業務効率化や人間同士のコミュニケーション促進に活用することを視野に入れている。
マスク未着用を識別し声掛けも
大成建設は先進技術を積極的に活用することで病院施設の運用最適化を実現する「スマートホスピタル構想」を推進しており、問診の自動化や会計の効率化、ロボットによる医薬品搬送、RFIDを生かした物品管理などを包括的にサポートすることを計画。今回のtemi活用もその一環と位置付けている。
temiは米temi社が開発したロボットで、高さは約1メートル。基本性能としてレーザーやセンサーなどを駆使して半径50メートル以内の地図を自動作成して自律走行するほか、テレビ電話などの機能も備えている。
実証研究ではtemiがマスクを着用していない人をカメラの画像とAIで自動識別して身に付けるよう声掛けをしたり、院内で発熱している人を見つけて指定場所に誘導したり、書類など軽量物を院内で搬送したり、入院する患者への施設内案内を代行したりすることを予定している。
病院のニーズを細かく踏まえ、20年度中に必要な機能を追加した新規のロボット運用システムを開発、21年度にビジネスとして展開していくとの流れを描いている。22年度以降は病院以外のさまざまな場面でもtemiとBuddyBotを生かしていくことを念頭に置いている。
大成建設医療・医薬営業本部医療施設計画部の盛田潤営業部長は「実証研究を通じ、病院内でtemiに対してどれくらいのニーズがあるか、どれくらい業務を効率化できるのかを見極めていきたい」と解説。医療施設計画部の兼平健太郎課長代理は「病院以外のさまざまなシーンに使えると思うので、それぞれのシーンに合ったシステムを開発していく」と述べた。
モノプラスの秋葉淳一代表取締役は「BuddyBotを採用することで、高額な産業用ロボットを購入しなくても汎用型ロボットのtemiを業務用途に使うことができるようになる」と語るとともに、大成建設とtemiの使途拡大へ引き続き連携したいとの思いを強調した。
temiが自律走行で院内を移動するイメージ※クリックで拡大(以下、いずれも大成建設とモノプラス提供)
temiを使ったICU内の看護師と医師の遠隔コミュニケーションのイメージ※クリックで拡大
(藤原秀行)