スマホやタブレット端末で専用機器並みの高性能実現、3年間で顧客100社獲得目指す
バーコードなどの高速・高精度読み取り技術を手掛けるスイスのScandit(スキャンディット)は11月19日、日本市場に本格進出すると発表した。
同月中に日本法人を設立、営業活動を本格化する。スキャンディットがアジアで拠点を構えて事業を展開するのは日本が初めてとなる。小売りや運輸、物流などの業界をメーンターゲットに拡販を図る計画だ。
スキャンディットは2009年、スイスのチューリッヒ工科大と米国のマサチューセッツ工科大の博士号を持つメンバーが創業した。スマートフォンやタブレット端末などカメラを搭載しているデバイスを用いて、バーコードリーダーなど専用機器並みの高速・高精度のスキャンを可能にする技術を展開。作業現場の照明が暗かったり、ラベルが破損していたりしても情報を正確に読み取ることができる。
さらに、AR(拡張現実)と組み合わせ、バーコードを読み取った商品の画像の上に商品名を表示して作業ミスを防ぐなどの活用方法も提案している。
複数のバーコードを迅速に読み取り、ARで商品上に情報を表示できる(スキャンディットプレスリリースより引用・クリックで拡大)
在庫管理や入出荷、セルフレジなどの用途で採用されており、米国のセブン-イレブンや百貨店のメイシーズ、フェデックス、欧州の物流企業ヘルメスなど欧米を中心にグローバルで1000社以上への納入実績がある。このうち物流関係は30%程度だという。
日本では日立ソリューションズと提携、自社で提供している情報システムにオプションで組み込んでいるほか、イオンリテールが店内設置の専用スマホを使って展開しているセルフレジ「レジゴー」にスキャンディットの読み取り技術を活用するなど、主要な流通・小売業を中心に20社以上で使われているという。
企業向けのモバイル・コンピュータービジョン市場でナンバーワン目指す
東京都内で同日開催した記者会見で、オンラインで参加したスキャンディットのサミュエル・ミューラーCEO(最高経営責任者)兼共同創業者は「技術を導入された企業は専用端末をスマートフォンなどのデバイスに置き換えることでTCO(総所有コスト)を下げ、オペレーションの効率を改善し、顧客とのエンゲージメント(信頼関係)も高めている」と成果を強調。
マイクロソフト日本法人などを経てスキャンディットの日本事業責任者に就任した関根正浩氏は、日本市場に着目した背景として、セルフレジへの関心が高いことや新型コロナウイルスの感染拡大で非接触の需要が伸びていること、産業の現場で人手不足が深刻化していることなどに言及。企業向けのモバイル・コンピュータービジョン市場でナンバーワンを目指すと明言した。
また、具体的な目標として、日本市場で今後3年間に100社の顧客を獲得することを挙げ、グローバル全体の傾向と同様にそのうち30%程度は物流で占めていくとの見通しを示した。
会見に同席したイオンリテールの山本実執行役員システム企画本部長は「バーコードをラインとしてではなく全体のイメージとして読み取る画期的な技術だ。スキャンディットの技術でストレスフリーの買い物を実現できている。今後はサプライチェーン、物流の面でも技術をぜひ広げていただき、業界全体が生産性を高められようにしてほしい」と期待を示した。
会見する関根氏
(藤原秀行)