交流イベントをオンライン開催、会員も1・3万人突破
日本UAS産業振興協議会(JUIDA)はこのほど、ドローン(無人飛行機)の安全運航に必要な知識や技能を持つ人材を育成する場としてJUIDAが認定している民間のスクール関係者らを対象としたオンラインのイベント「スクールフェスタ2020」を開催した。例年はスクール間の情報交換や交流の場として関係者が一堂に会して行っているが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、初めてオンラインで実施した。
JUIDAからは、コロナ禍でも会員数が順調に増えるなど、ドローンの有効活用にチャレンジする人が多く存在していると紹介。政府が2022年度の実現を目指している、市街地上空でドローンが操縦者の目が届かない遠距離を飛行する「レベル4」の安全性担保へ、操縦技能の国家資格創設で連携する意向も表明し、物流など産業分野でのドローン活用加速へあらためて強い決意を表明した。フェスタの最後には、開校1周年を迎えた全国のスクール38校を表彰した。
「根と幹、葉がそろいドローン活用加速」
スクールフェスタには冒頭、JUIDAの鈴木真二理事長が登場。昨年11月1日時点で会員が1万3425人、認定スクールは全国235校に達したと報告。政府が緊急事態宣言を発令した4~5月は会員の伸びが一時鈍化したものの、その後は再び増加し続けていると強調した。
政府が今年の通常国会に提出する航空法改正案で、適切な操縦技能を持っていることを証明する国家資格創設などを盛り込むことに関連し、JUIDA認定スクールで既に出している操縦や安全運航管理のライセンス内容も踏まえ、円滑に国家資格を整備できるよう協力する方針を表明した。
また、2021年の新たな試みとして、ドローンの用途別により高度な技能を持っていることを示す上級の技能証明ライセンスを本格的に展開していく方針を説明。「これまでの基本的な操縦技能は大きな木に例えると、しっかりした根を作ることになる。さらにその上に安全運航管理の太い幹がある。上級の技能証明は葉の部分に当たり、この3つがそろうことで、今後さまざまな分野でドローンを活用できるよう取り組みが加速される」と語った。
その上で「JUIDAは21年もドローンの産業振興に向け活動していきたい」と決意を示した。
続いて、林野庁森林整備部整備課の諏訪実造林間伐対策室長が、「森林整備でのドローンの活用」をテーマに講演。後継者不足や高齢化が進む林業で、民間事業者らの森林整備を支援する際、山林の現状を把握するための調査にドローンを投入して撮影など作業の負荷軽減を図ろうとしていることを紹介した。
JUIDAの熊田知之事務局長は、今後のJUIDA認定スクール事業の方向性を解説。ドローンに関連したプログラミング教室を小学生ら向けに行うことや、プラント点検と林業向けの上級技能ライセンスを創設、スクールにカリキュラムを提供していくことなどを発表した。
他にも、昨年にインドネシアで初の認定スクールを開設したのに続き、海外展開に力を入れていく姿勢をアピール。国ごとにスクールを運営できるようJUIDAに代わる団体が管理を担う制度を創設することや、国内で英語が担当な講師を募集していくことなどを明かした。将来の「レベル4」実現を目指し、JUIDAとしても高度な技能を持つ講師を育成する方針もPRした。
上空からドローンで森林の生育状況把握を教えるコース開設
認定スクールを代表し、北日本自動車学校が18年から運営している「富山ドローンスクール」、Future Dimension Drone Instituteが手掛けている「Future Dimension Drone Academy」が取り組みをプレゼンテーション。前者は中条充康理事長が地域の有力企業や大学、高等学校といった関係機関とも連携し、ドローンを使った空撮に関するセミナーを開催するなど精力的に活動していることを報告した。後者は草加好弘代表が、コマツが開発した上空からドローンを使い森林の生育状況などを空撮、細かく把握する手法を教えるコースを展開していることなどを明らかにした。
ブルーイノベーションからは熊田貴之代表取締役と経営戦略室の酒井和也氏が参加。JUIDAのプラント点検や林業に関する上級技能ライセンスの開発に協力していることに言及した上で、ドローンの産業利用拡大へ一段と貢献していきたいとの思いを明かした。
「未来のドローン人材の創出」をテーマに、ブルーイノベーションの那須隆志常務取締役、ORSPの坂本弘樹執行役員(IoT・ドローン事業本部ビジネスデベロップメントグループ長)、ヒトロボの千葉亮一氏の3人が対談。ドローンに関連したプログラミング教育の有効性を訴え、認定スクールで広く講座を展開していくよう要望した。
(藤原秀行)