「ビッグデータ活用で物流事業者の安全担保」

「ビッグデータ活用で物流事業者の安全担保」

トヨタ・日野・いすゞ共同記者会見詳報(その3)

――コネクティッドの領域で恐らく世界最大規模のビッグデータが集まることになるのではないかと思うが、どのような新しいサービスが生まれるのか。
いすゞ・片山氏
まずコネクティッドに関しては、まさにこれは今までお客様から、私どもは私どものシステムを持っており、それとやはり、日野さんとのシステムが違っているということで、先ほど申し上げた話そのもので、やはり一つのシステムで当然使いたいということがある。今回、一緒にこれやっていく、一つのプラットフォームにしようとするので、非常にこれはお客様の目線から見た時に、やっと日野といすゞがやってくれるか、という、まず答えになろうかと思う。

それに加えて、やはり商業車メーカーで提供できるいろんなサービス、アプリケーションで考えると、やはり非常に限られているものがある。それに対してトヨタさんの非常にいろんな、今からのコンテンツを考えれば、ものすごいことになるよな、ということだ。

それからまず、お客様がそのコネクティッドに対して非常に厳しい声があったのは、お客様自身の仕事をどうDX(デジタルトランスフォーメーション)していくかという、物流事業者様自体がもうそういう時代になっている中に、商用のプラットフォームが別々では非常に困るということがある。その一例とすれば、先ほど下社長からお話があったように、今トラックの積載効率は50%を切っているのが現実。このあたりの積載効率を上げる部分が、これは間違いなくコネクティッド技術、それから今われわれ自身が持っていない架装物のモニタリング、そういったところに3社の力を働かせれば絶対できる。

やりたいことはいっぱい出てくるだろうし、お客様からそれが逆に、いすゞ、トヨタ、日野の3社でやってくれないかという声が今から出てくるだろうということで、そういう新しい声と、パートナーさんも入ってもらうというようなことを考えると、非常にわくわくする話だと思っている。

日野・下社長
まさに今の運行管理効率化は大変有効だと思う。それともう1点は、今やはり物流事業者さんが一番困られているのはやはり安全だ。この安全ということに関して、例えば今の交通状況がまさにおっしゃられた通り、トヨタ、日野、いすゞからのビッグデータで、これから先の運行状況がどういう状況になっているかと、そうすると無理をして今走る必要がないとか、そういったことも含めて、やはり私自身は安心・安全に物が届くための物流に対するビッグデータの活用というのは、従来なかなかできなかった部分が可能になるのではないか。この点も大変期待している。

3社の合弁会社新社長に就任するトヨタ自動車・中嶋裕樹氏
今3社長からもあったように、トラックのデータを随時取ることができる、さらに例えばトヨタの乗用車のデータも組み合わせることによって、実際のお客様が使われているトラックと営業車のような乗用車も含めてこの大きなビッグデータをベースに、お客様の困りごとをしっかり解決したいというのが、新企画会社の狙いの一つでもある。

具体的には、企画会社と申し上げても、大事なことはお客様の現場に入り込み、実際の困りごとをわれわれ自身も体験、体感させていただくことでその問題点の本質と今われわれが持っているコネクティッド技術がどのように融合できるかと、まさに現場で汗をかかせていただくことで、その困りごとを解決するということが、この企画会社の狙い。そういったソリューションをお客様ごとに提案できれば、というふうに考えている。皆様のご協力もよろしくお願いしたい。

今取り組みを始めないと政府策定目標に責任持てなくなる

――今年の夏ごろに政府で商業車のグリーン戦略が決まる見通し。どういうふうな提言をしていきたいか。どういう形が望ましいと考えるか。
トヨタ・豊田社長
まず、われわれはリアルな経営をしており、リアルな商品でリアルな雇用を生んでいる。そして商用車であれ乗用車であれ、この産業を経営するには多くの人の支えの上で成り立っている。そういう意味では、まず具体的にいろいろやりながら分かってくることもあるので、そういう中において、そのあたりをルールメイキングである政府の方に提言をしていきたい。

先ほどのスピーチの中でも言わせていただいた福島県浪江町に、せっかくグリーン水素の実証実験のプラントがあるので、これを何とか、福島県には3つの人口30万都市があるので、この30万都市が実は日本で非常に多いサイズなので、この30万都市の、実際に生活をしておられる場所でモビリティというのはどうあるべきか、そこの原単位はどうあるべきかということを、具体的なプロジェクトを介してわれわれが何とか実証実験を実装まで持っていくような形に、一歩進んでいくに当たり、規制はこれをお願いしますよとか、カーボンニュートラルの面でぜひともそういうことをやっているところに、再生可能エネルギーをより使わせてほしいとかいうようなことを提言していけばいいんじゃないのかなというふうに思う。

われわれのリアルの経営、リアルの人達での真実を、いろんな形に、政府に正しく、正しいタイミングでお伝えしていき、もっといいモビリティ社会ができるよう、われわれが貢献できればうれしい。

いすゞ・片山社長
ご質問があったように、現在2030年半ばの商業車の目標に関して、まさに今行政の方で検討されているので、まずはわれわれとしては正確な事実情報、状態、それからお客様の声、これをしっかりお伝えする、それで最終的にどうなるか分からないが、ただ既に乗用車並みというような言葉も使われているので、それから国際競争力のことを考えれば、日本だけがハードル低いということはあり得ないので、そうなっていくと考えている。

それに対して今回の提携の意味としては、やはり商業車の電動化は技術的に乗用車メーカーさんの今までの技術に対して私は遅れてきていると思う。これはいくつも理由があるが、現実としてそういうふうに見なければいけないということ。もう一つは一言で商業車といっても、使われ方がものすごく多岐にわたる。そのエネルギーの使われ方もただ走るだけじゃないというようなことも考えていくと、30年半ばに対してのマイルストーンとすれば、今から5年間が本当に商業車の本命になる技術を取捨選択する期間だと思っている。それがまさに今回の(合弁会社の)CJPTでいろんな技術が必要になる。一つの技術でとても無理だと思っているので、それをまさにやっていく期間に、私どもとしては極めて大事な、その技術の見極めがその5年間。

それからそれに基づいて今度は量産というか商品として設計する部分がやはり4~5年は掛かる。それから普及を考えれば、今始めないと国の政策である30年半ばの商業車の目標に対しても、なかなか責任を持てないということになるので、ぜひこれを生かしていきたい。

日野・下社長
カーボンニュートラルに向けてBtoBの世界で一番重要なのは、やはりお客様が実際に使っていただける電動車であり、本当に使い勝手の良いものにしていかなければいけないというふうに思う。そういった意味では、現実的にはやはりコストをどうやって下げていくか、それからわれわれが今回の取り組みの中で、 例えば共通化ができれば、そういったところでお客様が使い勝手の良い商品、この商品はそれぞれがしっかり、ある意味競争の領域になると思うが、そういうことは今回の取り組みとしては重要ではないかなと思う。やはりお客様の業態、使われ方ごとに、35年に向けてのロードマップをしっかりお客様とともに政府も含めて、構築していくことをやっていきたい。

――新会社においてもやはりインフラ関係の部分で能動的に手を打っていくのか。
新会社・中島社長
まずやはりCASEの技術ということで普及してこそ、という思いはあるので、先ほど下社長からもあったように、より廉価にしていくだとか、それからよりお客様の使い勝手は、今これがまず第一義的にやるべきことだと認識している。

ただ一方で、先ほど福島県の例もあったが、時間がかかろうとも、やはり社会に既に存在しているお店だとか お客様が使われている利便性の高いショップなどに物は必ず運ばれる。その運ぶというところで、例えばクリーンな水素をベースにした、いすゞ、日野のトラックで物を運ぶということを、そういった量がある程度まとまれば、当然水素ステーションなどのインフラ投資にも積極的に皆さん動いていただけると思う。なので、社会に実装するということを目標にCASEの技術をしっかり展開していくということで今のご質問にお答えできるかと思っている。

(次回に続く)

(藤原秀行)

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