次期総合物流施策大綱、DX実現へ自動化・省人化など強力に推進し“業界の構造改革”踏み込む決意表明

次期総合物流施策大綱、DX実現へ自動化・省人化など強力に推進し“業界の構造改革”踏み込む決意表明

政府がパブリックコメント開始、6月中の閣議決定目指す

政府は5月25日、2021年度から5年間における物流関連政策の方向性を打ち出す新たな「総合物流施策大綱」案の意見募集(パブリックコメント)を開始した。期日は同31日まで。

新大綱は、深刻な人手不足や新型コロナウイルスの感染拡大による「非密集・非接触」の重要性の高まりなどの環境変化を考慮し、物流領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)実現に向け、自動化・省人化や業務のデジタル化、情報共有などを強力に推し進めていく重要性を強調。“物流業界の構造改革”に従来以上に深く踏み込む決意を示した。

政府はパブリックコメントの意見も踏まえ、6月中の閣議決定を目指す。

「協調領域」を積極的に拡大

大綱は1997年に5年計画として初めて閣議決定。その後、経済情勢の変化などを踏まえて内容を計4回改定しており、直近の計画は17~20年度が対象だった。

新大綱案は政策を進める前提となる現下の社会環境について「今般の新型コロナウイルス感染症の流行による劇的な社会環境の変化は、これまで進捗しなかった物流のデジタル化や、物流業界における構造改革を加速度的に促進させる誘因となる可能性があり、これらを一気呵成に進めるまたとない好機」と指摘。

さらに、コロナ禍で物流の存在意義が見直されている潮流に触れ、「こうした機を逸せずに、エッセンシャルという位置付けが再認識されている物流の社会的価値を広く一般に浸透させることが必要」と訴えた。

また、前大綱の進捗状況を総括。「様々な施策が推進され、物流事業者のみならず、一定の荷主や消費者の間でも物流の重要性について理解が深まり、具体の取組に結び付いてきたことは、大きな成果といえる」と自己評価した。

同時に、前大綱が掲げていた物流生産性に関連する代表的な指標の推移を踏まえ、トラックの積載効率が4割を下回っていることなどから「定量的に見れば(取り組みは)いまだ道半ばであると評価せざるを得ない」との厳しい見方も示した。

併せて、「これまで『競争領域』とされる部分が多かった物流について、『協調領域』もあるという前提の下、協調領域を積極的に拡大する方向で捉え直すことも重要」と明示、荷主企業や物流事業者の連携を強く要望した。


大綱案の骨子(政府のパブリックコメント用資料より引用)

「簡素で滑らか」「担い手にやさしい」「強くてしなやか」が目標

その上で、21年度以降の政策の方向性として
①物流DX(デジタルトランスフォーメーション)や物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化=(「簡素で滑らかな物流」の実現)
②労働力不足対策と物流構造改革の推進=(「担い手にやさしい物流」の実現)
③強靱で持続可能な物流ネットワークの構築=(「強くてしなやかな物流」の実現)
――を明示。

今後の具体的な施策として、倉庫へのロボット導入支援、隊列走行・自動運転の実現に向けた取り組みの推進、共同輸配送の拡大、列車やバスで荷物を運ぶ貨客混載の適切な展開、倉庫シェアリングの推進、ドローン物流の実用化などを列挙した。

併せて、大規模災害や感染症流行といった国際情勢の大きな変化や有事の発生に直面しても機能を維持できる強靭性・弾力性を備えた物流を実現するため、災害発生時の基幹的海上交通ネットワーク機能の維持、港湾で「ヒトを支援するAIターミナル」に関する各種取り組みの推進、モーダルシフトの一層の推進などを盛り込んだ。

(藤原秀行)

大綱案はコチラから(政府のパブリックコメント募集サイト)

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