大阪湾岸で物流施設需要が回復と指摘

大阪湾岸で物流施設需要が回復と指摘

中部圏は19年の新規供給が過去最高に・CBREの不動産市場展望(後編)

 シービーアールイー(CBRE)は1月10日、2019~20年の不動産市場動向に関する予測を発表した。

 賃貸物流施設に関しては三大都市圏のいずれも需要が旺盛で2020年までは市場の堅調な拡大が続くとの見通しを明らかにした。

 後編ではこのうち、近畿圏と中部圏の動向予想について詳報する。

前編はコチラから

実質賃料は18年第3四半期が底

 近畿圏は、
①これまで大量供給などが響き需給バランスが悪化していた大阪湾岸部で、域内の拡張ニーズを中心に需要が持ち直し空室解消が進んだ
②大阪から京都にかけての内陸部でテナントの引き合いが強かった
③兵庫県内陸部でも新規供給に伴い周辺に点在する工場や物流拠点の拡張需要が顕在化してきた
――ことから空室率が低下していると分析。

 新規供給が18年の20万坪から19年は現状で10万坪に落ち着くとみられることもあり、大規模のマルチテナント型物流施設(延べ床面積1万坪以上)の平均空室率は18年第4四半期(10~12月)の13・4%から19年の第4四半期は11・8%まで低下するとみている。

 ただ、20年には兵庫県尼崎市でESRが手掛ける延べ床面積11万坪超の国内最大級案件が完成するなど、トータルの新規供給規模が23万坪へ再び拡大するためリーシングに時間を要するとみられ、空室率は20年第4四半期に14・6%まで上昇すると想定している。

 実質賃料(保証金や敷金の運用益を含む)は18年第3四半期を底として上昇傾向にあると分析。湾岸部の賃料水準が持ち直す一方、兵庫県内陸部で物件の完成が相次ぐことから、全体では小幅な伸びにとどまると推測している。

 CBREリサーチの高橋和寿子シニアディレクターは湾岸部の動向について「域内で荷物が増えている一方で開発自体は既にかなり出来ていたので、いい物件から空室が埋まっていった。(デベロッパーが)賃料を下げたから入居が増えたということではない」との見方を示した。


近畿圏の空室率と実質賃料の推移予測(CBRE提供)※クリックで拡大

中部圏は「まだまだ物流施設が足りない」

 中部圏の新規供給は18年の4万坪から19年は10万坪と過去最高水準まで増えると予測している。20年は現時点で6万坪程度にとどまる可能性があると推定。

 こうした状況を踏まえると、大規模のマルチテナント型施設(延べ床面積5000坪以上)の平均空室率は18年第4四半期の4・1%から19年に最大14%程度まで上昇した後、20年第4四半期には10・6%まで再び落ち着くとの流れを見込んでいる。

 名古屋市中心部へのアクセスに優れている物件の数が引き続き限られているため、全体の実質賃料は18年第4四半期から20年第4四半期にかけて0・6%アップと緩やかに上昇していくと見込んでいる。


中部圏の空室率と実質賃料の推移予測(CBRE提供)※クリックで拡大

 リサーチヘッドの大久保寛エグゼクティブディレクターは中部圏の市場環境に関し「(首都圏や近畿圏に比べれば)ストックが依然少ないため、新しい物件で少しでも空室が残ると空室率が跳ね上がってしまうが、あまりそのことに焦る必要はない。まだまだ物流施設が足りないエリア」と述べ、今後も需要が期待できるとの見通しを示した。

(藤原秀行)

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