首都圏の大規模マルチテナント型物流施設空室率、9月末は4年ぶり5%台に上昇

首都圏の大規模マルチテナント型物流施設空室率、9月末は4年ぶり5%台に上昇

CBRE調査、「しばらくは需給の緩和基調が継続」と展望

シービーアールイー(CBRE)は10月31日、今年第3四半期(7~9月)の大規模マルチテナント型物流施設の賃貸市場動向に関する調査結果を公表した。

首都圏の期末時点の平均空室率は5.2%で、前期(4~6月)の4.4%から0.8ポイント上がった。2四半期ぶりの上昇で、5%台に到達したのは到達したのは2018年第3四半期以来、4年ぶり。

新規需要は14.8万坪と、今年の第1(1~3月)、第2四半期を上回り旺盛だったものの、新規供給はここ2年間で最大だった22年第1四半期の26.0万坪に次ぐ規模の19.9万坪に達し、新規需要を上回ったことが影響したもようだ。

調査対象は東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県を中心とする地域で延床面積1万坪以上の227棟。


首都圏の需給バランス(CBRE調査資料より引用)

第3四半期に竣工した8棟のうち4棟は満床だった半面、残る4棟は空室を残して完成を迎えた。CBREは「募集賃料が高めの物件が苦戦するなど、リーシングの取り組みの違いも竣工時の稼働率の差として表れたようだ」と指摘した。

今期の1坪当たり実質賃料は4550円で、前期比0.7%アップ。CBREは、賃料水準が比較的高めのエリアで完成した物件が多かったことを背景に挙げている。「相対的な賃料水準の高さが敬遠される一部エリアでは、賃料が弱含む傾向が見られた」という。

CBREは最近の傾向として「物件の選択肢が多いことに加えて、物価高などを背景とした事業環境の先行き不透明感が高まる中、テナントはより選別的となっているとみられる」と分析。

既存物件(竣工1年以上)の空室率は第1四半期の0.9%、第2四半期の1.3%から今期は1.7%と継続的に上昇しており、「競争力の低い物件の空室消化に時間がかかっていることがうかがえる」と解説。資材などの価格高騰で造作費を含む入居コストが上昇していることもテナント契約締結までに時間を要している理由になっているとの見方を示した。

今後については、新規供給は次の第4四半期(10~12月)にいったん減少するものの、23年の第1四半期には35万坪を超え、四半期としては過去最高になると予想。「建築部材の納期長期化や、建築コスト上昇による計画の見直しなどで竣工が遅れる案件も出てこようが、今後しばらくは需給の緩和基調が継続することが予想される」と展望している。

(藤原秀行)

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