国内への低価格で自律的な宇宙輸送能力強化へ
宇宙輸送と宇宙利用を通じて地球の課題解決を目指す宇宙の総合インフラ会社インターステラテクノロジズ(北海道⼤樹町)は12月27日、SBIホールディングス子会社のSBIインベストメントが運営するファンドを新たな引き受け先とした第三者割当増資で10億円の資金を調達したと発表した。
(左から)インターステラテクノロジズ・稲川貴大社長、SBIホールディングス・北尾吉孝会長兼社長、インターステラテクノロジズ創業者・堀江貴文氏
SBIインベストメントが運営するファンドによる、ロケット分野への出資は初めて。調達した資金は初号機打ち上げを目指して開発している超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の研究開発、設備投資、人材採用、材料費などに充てる。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響で世界的に宇宙輸送能力不足が課題となる中、インターステラテクノロジズはZEROをいち早く市場に投入し、国内への低価格で自律的な宇宙輸送手段の構築に貢献していきたい考えだ。
急成長する宇宙市場、課題は宇宙輸送
世界の宇宙市場は年々拡大しており、2040年には今の3倍近くとなる110兆円の巨大市場に成長すると予測されている。特に小型サイズの人工衛星の需要が大きく伸びており、衛星を使ったインターネット通信の普及、衛星データを活用した「超スマート社会」の実現など、幅広い分野への波及効果が期待されている。
一方、急拡大するニーズに対し、衛星を運ぶための唯一の手段となるロケットは、国内の打ち上げ回数が年数回と世界シェアの約2%にとどまっており、国内の衛星打ち上げ需要は海外に流出しているのが現状。さらに、ウクライナ戦争の影響で世界の宇宙輸送の約2割を占めていたロシアのロケットを日本や欧米諸国は使えなくなるなど、宇宙輸送能力不足が宇宙利用拡大の世界的なボトルネックになっている。
経済安全保障の観点からも各国とも宇宙輸送の強化が急務となっており、日本も政府が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」でロケット打ち上げ能力を強化する方針を盛り込んだ。
12月の宇宙開発戦略本部「宇宙基本計画工程表改定」では、スタートアップによる研究開発を促すSBIR(Small Business Innovation Research)制度の活用や政府によるサービス調達などでベンチャー企業の取り組みを促進し、宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションを実現することも明記している。
ZEROは、宇宙到達実績のある観測ロケット「MOMO」に続くロケットとして、インターステラテクノロジズが開発・製造している、超小型人工衛星を宇宙空間(地球周回軌道上)に運ぶための小型ロケット(長さ25m、直径1.7m、総重量33t)。1機当たり6億円以下と海外に引けを取らない国際競争力のあるロケットとして、2023年度の初号機打ち上げを目指している。
(藤原秀行)※いずれもインターステラテクノロジズ提供