公取委が「優越的地位の乱用」の緊急調査結果を公表
公正取引委員会は12月27日、燃料費や人件費、原材料費といったコスト上昇分の取引価格への転嫁の必要性を下請け企業などと価格交渉の場で明示的に協議せず、据え置いていることが確認された企業として、佐川急便やトランコム、丸和運輸機関など13の企業・団体名を公表した。
公取委が独占禁止法で禁じている「優越的地位の乱用」に関する緊急調査を実施、その結果をまとめた。公取委は各社の行為が独禁法や下請法に違反していると認定したわけではないと説明するとともに、取引内容の改善を各社に強く求めている。
名前を公表したのはこのほか、大和物流、日本アクセス、デンソー、三協立山、東急コミュニティー、豊田自動織機、ドン・キホーテ、三菱食品、三菱電機ロジスティクス。全国農業協同組合連合会(JA全農)。
公取委によると、今年6月、業務を受注している全国の企業8万社に対し、書面での調査を実施。コストアップが続く現下の情勢で取引価格が引き上げ要請の有無にかかわらず据え置かれ、事業活動への影響が大きい発注側の企業名を回答するよう求めたところ、受注企業側からは4573社の名前が挙がったという。
公取委は8月、この4573社に加え、関係省庁や業界団体から情報提供が多かった業種の発注側企業約2万5000社に書面調査を行い、コストの転嫁状況などの回答を要求。併せて、7~12月にかけて書面調査などの内容を踏まえ、立ち入り調査を306件展開した。
さらに9月以降、前述の4573社の中で、特に受注側企業から名前が多く挙がった上位50社程度を抽出。このうち当該発注者の名前を挙げた受注者の数、過去の下請法違反歴の有無、受注者からの具体的な行為の指摘の有無などを考慮し、個別の発注者に対し、立入調査や独禁法第40条に基づく報告命令なども含めた、より詳細な個別調査に踏み切った。
公取委は優越的地位の乱用に当たる可能性がある行為として、
①コスト上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格交渉の場で明示的に協議することなく、従来の取引価格を据え置く
②労務費、原材料価格、エネルギーコストなどのコストが上昇したため、取引の相手方が取引価格の引き上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メールなどで取引の相手方に回答せず、取引価格を据え置く
――を挙げている。
公取委は「受注者から多く名前が挙がった発注者であって、かつ、多数の取引先について①に該当する行為が確認された事業者については、価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、取引当事者に価格転嫁のための積極的な協議を促すとともに、受注者にとっての協議を求める機会の拡大につながる有益な情報であること等を踏まえ、独禁法第43条の規定に基づき、その事業者名を公表することとした」と説明している。
併せて、①または②に該当する行為が認められた4030社に具体的な懸念事項を明記した注意喚起文書を送付、警告した。
公取委は今後も、調査の継続などを通じてコスト上昇分の適正な取引価格への転嫁を促進していくと強調している。
(藤原秀行)