倉庫や自動車などリース会計のルール変更、原則全て資産と負債に計上

倉庫や自動車などリース会計のルール変更、原則全て資産と負債に計上

策定の委員会が草案公表、26年度にも適用へ

財務会計基準機構で企業会計のルール策定などを担っている企業会計基準委員会(ASBJ)は5月2日、企業のリース取引に関する新たな会計基準の草案を公表した。

企業が借りている店舗や倉庫、設備、自動車、航空機、船舶などに関し、少額なものなどを除き、原則として全て、借りている企業の貸借対照表(B/S)の資産と負債の両方に計上することを打ち出した。

現行の会計基準は、リースのうち契約期間中の中途解約ができず、実質的には購入に近い「ファイナンスリース」で借りている物はB/Sに計上、減価償却している一方、それ以外の賃貸借の「オペレーティングリース」は計上の対象としていない。

オペレーティングリースは耐用年数の長い建物やオフィス家具、機器などを借りる際に多く使われている形態のため、B/Sが企業の財務実態を正しく反映していないとの懸念が投資家などから出ていた。

国際会計基準(IFRS)は既に、外部から見て企業の経営実態をより正確に捉えられるようにするため、リースしている物をB/Sに計上するルールを導入しており、米国会計基準も同様の内容。日本として国際的な会計の流れに追随する。

ASBJは8月まで草案に対する意見を募集した上で、内容を正式に決定。2026年度にも国内で企業会計に適用していきたい考え。

ROAや自己資本比率に影響も

草案は、リースの定義として「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分をいう」と記している。リース会社と直接契約する以外の形態もルール変更の対象に含まれる可能性がある。

今回のルール変更は会計上の処理を見直すことが柱で、企業の経営自体が直接大きく変わるわけではない。ただ、リースしている物を全てB/Sに計上すると場合によっては資産と負債の規模が大きく膨らみ、経営上の指標として使われているROA(総資産利益率、企業が総資産を駆使してどの程度利益を挙げたかを見る)や、財務の健全性を表す自己資本比率(総資本のうち純資産が占める割合。負債が増えると低下する)が悪化する可能性があるため、企業の経営判断に影響することがあり得る。

多くの船舶をリースしている船会社や航空機を借りている航空会社、外部の倉庫を多く使っている荷主企業などがリース会計変更で影響を受ける公算が大きい。また、ルールが変更となれば、リースを利用する上でB/Sの資産・負債への計上が不要だったメリットがなくなるため、今後は企業のリース利用の実態が変わることも予想される。

(藤原秀行)

草案はコチラから(ASBJホームページ)

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