電力3社と川崎汽船など、共同で「次世代(浮遊軸型)風車の海上小型実証研究」開始

電力3社と川崎汽船など、共同で「次世代(浮遊軸型)風車の海上小型実証研究」開始

洋上風力の低コスト化に挑む

電源開発(Jパワー)と東京電力ホールディングス(HD)、中部電力、川崎汽船、アルバトロス・テクノロジーは5月31日、「次世代(浮遊軸型)風車の海上小型実証研究」に関する共同研究契約を締結したと発表した。


浮遊軸型風車のウインドファームのイメージ動画(提供元:アルバトロス・テクノロジー)

洋上風力発電は大量導入やコスト低減が可能な上に経済波及効果も期待できるため、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札と考えられている。遠浅海域の少ない日本は深い海域でも導入余地が大きい浮体式洋上風力発電への注目度が高まっているが、その普及に当たっては技術開発を通じたコストの大幅低減が必須。製造における国産化率を高めることで、国内での高い経済波及効果が見込まれる。

5社は実証研究で低コスト化・国産化率向上が期待できる次世代の風車として、浮遊軸型風車の小型実験機(20kw級)を共同で製作する。浮遊軸型風車(Floating Axis Wind Turbine=FAWT、ファウト)は「回転する」円筒浮体で垂直軸型風車を支えることをコンセプトに設定している。主な特徴は以下の通り。

【低コスト化】
・傾斜しても発電性能が低下しにくい特性から、最大出力時に20度傾くことを許容するため、浮体の小型化で設備費用を大幅低減する
・風車部分はカーボン複合材(CFRP)の連続引抜き成形を採用し低コストで製造可能
・発電機などの主要機器が、海面近くに設置される垂直軸型風車の特性を生かして、保守・運転維持費も大幅な低減を見込む

【国産化率向上】
・風車ブレードは、同一断面形状で長さ方向に分割製造が可能なため、大規模な製造工場が不要。また、輸送も容易となるため、日本国内での製造に適したデザイン
・風車部分に使用するカーボン複合材の原材料の炭素繊維のシェアは、日系企業が8割ほどを占めている

浮遊軸型風車はJパワー、大阪大学大学院工学研究科、アルバトロスが共同で初期検討を進め、今回新たな枠組みで次のステップとなる本実証研究に乗り出すことにした。実証研究では、浮遊軸型風車の小型実験機を国内実海域に設置し、解析・設計手法の妥当性を確認の上、さらに大型機(MW級)の海上実証プロジェクトにつなげることを想定している。

5社は浮体式洋上風力発電の「ゲームチェンジャー」として期待される浮遊軸型風車の開発を、それぞれが保有する知見を活かして共同で取り組むことにより、洋上風力発電の主電源化達成に貢献したい考え。

協力機関として、大阪大学大学院工学研究科には引き続き動揺解析技術を、革新複合材料研究開発センターICC(金沢工業大学)にはカーボン複合材の成形技術の指導でそれぞれ連携。小型実験機の製作に関しては、風車部は福井ファイバーテック(愛知)、浮体部はみらい造船(宮城)とそれぞれタッグを組む。


浮遊軸型風車(大型実証機5MW級)のイメージ(提供元:アルバトロス・テクノロジー)

(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用

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