OECDが多国間条約で調整
OECD(経済協力開発機構)は7月12日、日本や欧米各国などが議論してきた、経済のデジタル化やグローバル化に対応した国際課税のルール改定に関し、巨大IT企業などの税逃れを防ぐための「デジタル課税」を定める多国間条約の大枠で合意したと発表した。OECDが各国・地域間の交渉の事務局を務め、意見調整を後押ししてきた。
巨大IT企業などが事業拠点を構えていなくても、サービスの利用者がいて一定規模以上の収益を出している国・地域では課税できるようにするのが柱。グローバル企業が税率の低い国・地域に本拠を置くことで、サービスを展開している国・地域で納税を免れたり、特定の国・地域に納税が偏ったりする問題を解決するのが狙いだ。
デジタル課税の対象となるのは、売上高が200億ユーロ(約3兆円)を超え、売上高に占める利益の割合が10%を上回る多国籍企業を想定。利益の一部を各国・地域の売上高に応じて分配する。業種をIT企業に特定はしないが、利益率が10%以上となると米国のグーグルやメタ(旧フェイスブック)といったIT大手が該当する可能性が高くなる見通し。
大枠には日本や欧米、アジアなどの138国・地域が合意した。OECDは今年中に多国間条約の署名式を開く予定と説明しているが、発効を目指す時期は2025年と表明、これまでの方針から1年先送りした。
今後は各国・地域で法改正や議会の承認などの手続きが進められるが、多くの巨大IT企業が活動している米国では税収入が他の国・地域に移ると見込まれることなどから反対する声も上がっており、米国の動向がデジタル課税の展開を占う上で大きな鍵を握る。
(藤原秀行)