政策での港湾の位置付けなど焦点に
国土交通省は7月31日、東京・霞が関の同省内で、名古屋港でサイバー攻撃を受けた管理システムが障害を起こし、コンテナターミナルのオペレーションが2日以上ストップした件を受け、「コンテナターミナルにおける情報セキュリティ対策等検討委員会」(委員長・小野憲司京都大学経営管理大学院客員教授)の初会合を開いた。
委員会は大学などの有識者や情報システム専門家、海運など関係事業者らが参加。内閣官房国家安全保障局の担当者らも名を連ねている。管理システムを運営している名古屋港運協会や名古屋港管理組合に今回のトラブルの経緯を聴いた上で、再発防止策や情報システムのセキュリティ対策強化の方向性を検討する。
併せて、政府は経済安全保障推進法やサイバーセキュリティ基本法に則り、港湾のセキュリティ対策を強化することを視野に入れており、委員会で有識者らの意見を聴取した上で対応を決める。
初会合で事務局を務める国交省は、今年9月ごろに開催予定の第2回会合で、情報セキュリティ対策やシステム障害発生時に対応策について、今年11月ごろに開く見通しの第3回会合で政府のサイバーセキュリティや経済安全保障の政策における港湾の位置付けについて、それぞれ議論の内容を踏まえて考え方を整理した「中間取りまとめ」を策定するスケジュールを提示。2024年の年明けを想定している第4回に「最終取りまとめ」を決定することも示した。
初会合の冒頭、あいさつした国交省の稲田雅裕港湾局長は「(サイバー攻撃で)物流に大変大きな影響が出た。あらためて、港が果たす役割の大きさと港湾の情報セキュリティ対策の重要性を痛感した。このような事態を二度と引き起こすことのないよう、この委員会を立ち上げた」と経緯を説明。
「港湾がより安全で安定的に物流サービスを提供できるよう、皆様の英知を結集して対策を図ってまいりたい」と強調した。
経済安全保障推進法は政府が指定した「特定社会基盤役務(基幹インフラ)」に関し、設備を導入する際などに政府の事前審査を義務付けている。また、サイバーセキュリティ基本法は防護すべき「重要インフラ」に指定した分野について、厳格なセキュリティ対策を講じるよう求めている。いずれも現状、港湾は事前審査やセキュリティ対策の対象に含まれていない。政府は港湾も両法による厳格な取り扱いの対象にすることを念頭に置き、次回の委員会会合で出席者に議論を求める見通し。
国交省で開催した初会合
名古屋港飛島ふ頭南側コンテナターミナルのガントリークレーンとAGV(無人搬送ロボット)(名古屋港管理組合提供)
(藤原秀行)