「ゼロエミッション」実現目指す、滋賀県の事業に採択
商船三井は8月3日、九州大学大学院工学研究院海洋システム工学部門 篠田岳思教授、大洋産業(滋賀県彦根市)の両者と共同で提案した水素生産用の純水製造システム開発事業を、滋賀県が「近未来技術等社会実装推進事業」に採択したと発表した。
商船三井は脱炭素・水素社会の実現に向け、洋上風エネルギーを利用して船上で水から水素を作り船の推進力に変える「ウインドハンタープロジェクト」を手掛けている。水素の生産には飲料水よりも高品質な純水が求められるため、海水から水素を生産する場合、まず有機物質(炭素含有物、マイクロプラスティックなど)、無機物質(鉄分、マグネシウム、ナトリウム)、汚泥といった不純物を除去するためにフィルターを通し、海水を純水化している。
現在、一般的に使われているフィルターは頻繁に交換する必要があり、船員の作業が増えることとコスト面で大きな負担となっているのが課題だ。
共同開発で3社はそれぞれ得意分野に注力し、今後さらに高い技術が求められる細菌レベルまで除去が可能となる高寿命・高耐久・高性能のフィルターを実現、純水製造システムを製造することを目指す。
<各社の役割>
商船三井:プロジェクトマネージメント、市場調査、舶用システム設計の知見提供
九州大学:純水製造システムの実証実験設計、高性能フィルターの開発・適用
大洋産業:RO装置(水を通しイオンや塩類など水以外の不純物は透過しない性質を持つ膜を用いた装置)の開発・適用
商船三井は本技術をウインドハンタープロジェクトにおける本船上での海水による純水製造に活用して効率的に水素を生産することで、大型ゼロエミッション船の実現がまた一歩近づくことになるとみている。
本開発では、滋賀県の琵琶湖での実証実験を通じて、海水だけでなく淡水も対象として純水製造システムを設計する。日本最大の湖の琵琶湖で淡水と海水を比較することで、水質の違いによる影響を評価し、汎用性のある純水製造技術の確立につなげたい考え。
商船三井はウインドハンタープロジェクトのための純水製造技術を創成するのに加え、陸上の水素製造基地への純水の提供等への開発技術の転用などを進めることを計画している。
(藤原秀行)※いずれも商船三井提供