「自動化・省人化支援がデベロッパーとしてさらに重要」
【独自】プロロジス・モガダム共同創業者 会長兼CEO独占インタビュー(前編)
プロロジスのハミード・モガダム共同創業者 会長兼CEO(最高経営責任者)はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。
モガダム氏は、物流施設の開発・提供にとどまらず、グローバルでテナント企業向けに多様な業務効率化・自動化支援のソリューションを展開していることに言及。日本でもテナント企業の物流現場の自動化・省人化を後押ししていくことがデベロッパーとしてさらに重要になってくると展望した。
ソリューションに関しては、EV(電気自動車)の導入支援や職業訓練などの領域も対象に入っていると強調。4つの領域に沿って、日本でも物流業界全体の支援により本腰を入れていく姿勢をアピールした。インタビュー内容の後編を紹介する。
取材に応じるモガダム氏
都市部のコンパクト案件「アーバン」に期待
――日本の物流施設市場も大きな変化が生じています。御社も最近は郊外に大規模な物流施設を単独で造るだけではなく、都心部にコンパクトな案件を開発しています。
「『プロロジスアーバン』のことですね。これはお客様のサプライチェーン全体の課題解決という意味で手掛けているのですが、日本だけではなく、米国や欧州、中南米でも展開しています。まだまだ日本も含めて発展途上の取り組みであり、どのようなニーズがあるのかわれわれもまだ完全につかめているわけではないのですが、新たなチャンスだと思います。都心部にどこまで用地を確保できるかが課題になりますが」
――日本では、トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念される「2024年問題」が物流業界最大のテーマとなっています。デベロッパーとしても無視できる話ではありません。どのようにお考えでしょうか。
「今後現実に起きてくる話ですが、そもそも、消費者に物をきちんと届けなければいけないというのは大きなミッションですが、それは24年問題があってもなくても重要なことに変わりはありませんし、きちんと対応していきます。われわれデベロッパーとしてもいろいろと新しいことにチャレンジできる機会が数多く出てくるはずです。長距離輸送の中間地点で荷物を引き継ぐ中継地点のように、新たなビジネスチャンスも生まれてくるでしょう」
――2024年問題もドライバーの不足が重要な課題となっています。これからさらに労働力が減っていくと見込まれる中、いかにテナントの自動化・省人化を支援していくかがデベロッパーとしても大事になってきています。今以上にサポートしていくべきだと感じますが、どのように思いますか。
「まさにおっしゃる通りです。数年前から企業が直面している物流企業を解決するため、われわれも現場で必要とされるサービスや商品をプラットフォーム『プロロジス・エッセンシャル』と称して、日本も含めて積極的に提案しています。これは大きく言って4つの柱があります。すなわち、物流施設の運営、エネルギーとサステナビリティ、モビリティ、雇用と自動化です」
「運営はカスタマーが入居後、すぐに施設のオペレーションを始められるよう事業の最適化をサポートします。エネルギー+サステナビリティは、温室効果ガス排出削減やネットゼロ(実質的に排出ゼロ)の達成に向けて、再生可能エネルギーの導入を進め、効率化やコスト削減の実現を後押ししていきます。モビリティはお客様の商用車両の電動化をサポートします。そして雇用と自動化は職業訓練や研修の機会を提供し、カスタマー―の雇用を最適化します。併せて、ロボティクスや自動化のソリューションを提供して、働き手の生産性と安全性を高めていきます」
「一例を挙げれば、物流施設で働く従業員ら向けにEV(電気自動車)の充電インフラ整備にグローバルで2040年までに1.4兆ドル(約210兆円)を投じる計画です。さらに、25年までに再生可能エネルギーを利用し、世界で1GWの発電を実現するとの目標を掲げています。人材育成や物流業界への就労支援の面でも、米国の12地域でCWI(コミュニティ・ワークフォース・イニシアティブ)と称する職業訓練プログラムを展開しており、25年までに2万5000人へ提供することを目指しています」
――やはりサステナビリティやESG、SDGsとの概念は物流施設を開発する上でなくてはならない、考慮すべきリストの中でもトップに入ってくる項目になっているように感じます。
「おっしゃる通り、ものすごく重要だと思います。われわれとしても、先ほどお話した通り4つの柱で、グローバルにサービスを提供できますし、太陽光という再生可能エネルギーで電力を生み出せる物流施設の屋根も相当の数に上ります。プラットフォームとして展開できます」
――物流施設はどこまで進化していくのでしょうか。
「われわれは物流施設の専門家集団であり、物流施設しか手掛けていませんから、そういった意味でお客様の思い、ニーズを本当に理解し、その上でこの4つのエッセンシャル・ビジネスもそうですが、新たなサービスを提案できます。事業を始めたころから常にイノベーティブで新しく物を考えて先を見据えてきました。今後もそうした流れは続けていきます」
――米国では新規開発だけでなく、既存物件の取得にも積極的です。
「やはりアクイジション(物件取得)の事業も非常に重要です。仮に今後、新規物流施設の市場が不安定になってくれば、既存物件の市場にチャンスが出てくると思います。既存の施設をコンバージョン(用途変更)するのもチャンスがあるでしょう。先ほどお話が出た、プロロジスアーバンについても、手間暇がかかりますし、そんなにたくさん数は出せないかもしれませんが手掛けていきたい」
既存設備の用途変更にも意欲
――日本では最近、1つのエリアに相当大規模な物流施設を集中的に開発する動きがあります。プロロジスで手掛ける可能性はありますか。
「実は、四半世紀前から、欧州では『パークライフ』との名前で展開していますし、米国でもプロロジスパークといえば何棟か複数の物流施設が建っています。日本はなかなかそれだけの用地がないのですが、グローバルで見ればずっと手掛けています」
――日本の事業に関しては、基本的にあまり大きくスタンスを変える感じではなく、今までやってきたことを積み上げていくということでしょうか。
「そうですね、基本理念としてはやはり、お客様のニーズにお応えするということを重視していきます。かつては物流施設だけでしたが、今は4つの柱でソリューションを提供できますし、新たなコンサルティングサービスも該当します。われわれには資金力もありますから、お客様の代わりにわれわれが設備投資をする形にも対応できます」
――日本に限らず、2024年に新しく手掛けたみたいことのアイデアはありますか。
「25個ぐらいあるんですが(笑)、残念ながらこの場で共有はできません。ただ、常にPoC(概念実証)をしていますし、先ほども申し上げたプロロジス・エッセンシャルの4つの柱をもう少し深掘りしていきたい。あとはコンバージョン(用途変更)ですね。既存の施設をただの建て替えじゃなくて、他の仕様に変える。日本は結構、いい建物、価値がある建物が残っていますから、そこを単純に壊してまた新しいものを造るのではなく、新たな価値をお客様に提供していくことも必要でしょう」
(本文・藤原秀行、写真・中島祐)