「スマートシティ」実現へ住民のパーソナルデータ活用、観光領域も
セイノーホールディングス(HD)とエアロネクスト子会社でドローン物流を手掛けるNEXT DELIVERYは12月22日、熊本県人吉市で、IoT技術の開発を手掛けるウフル、システムフォレスト(熊本県人吉市)と連携し、11月21日に総務省が主導する「情報信託機能を活用したスマートシティにおけるデータ利活用に係る調査」の一環として、災害時の緊急物資輸送を想定したドローン配送の実証実験を行ったと発表した。
スマートシティを推進する上で不可欠な住民のパーソナルデータ活用に関し、個人情報の取り扱いなどの問題でまだ進んでいないことから、ドローンなどの先進技術を使って解決することを想定している。
人吉市は2020年7月、豪雨災害に見舞われた経験から、住民と観光客が安心して過ごせる街づくりとして、デジタル技術を用いたスマートシティ化に注力。人吉市、ウフル、ウフルの子会社システムフォレストの3社は総務省主導のスマートシティ関連の調査業務を実施し、住民と観光客が安心してパーソナルデータを提供できる仕組みや、データ提供を促進する最適なサービス内容を模索するため、観光・防災領域の実証実験に踏み切った。
高齢者、乳幼児とその保護者、アレルギーを持つ人など多様な属性の25人の参加者からパーソナルデータを得て、ウフルのデータ・サービス連携基盤に集約・管理、都市OSと連携させることで、このデータを基に、参加者の属性に合わせた観光と防災の分野での実証実験を行いました。
具体的には、観光分野は個々の属性に適した飲食店を提案。防災分野は球磨川氾濫時の避難所を想定し属性に合わせた支援物資の輸送を実施。支援物資の配送には、セイノーHDとドローン配送を手がけるNEXT DELIVERYが協力し、効果を検証した。
観光分野は、参加者のパーソナルデータ(アレルギー情報、乳幼児連れなど)を基に、属性に合った飲食店を観光デジタルマップ上で表示し、参加者はマップを使って飲食店を予約した。飲食店側は参加者の提供したパーソナルデータ(アレルギー情報など)を考慮して、来店に向け調整した食事メニューを提供。一連の体験の後、参加者からのフィードバックをヒアリングし、サービスの効果と改善点を評価した。
防災分野は、災害時を想定し参加者は避難所へ避難、スマートフォンなどのデジタル機器でチェックインし、参加者のパーソナルデータ(子ども連れや高齢者など)を基に、各避難所の避難者属性をダッシュボードに表示した。その後、参加者の属性に応じた支援物資(乳幼児向けの粉ミルクなど)を近隣施設から、必要性、緊急性など状況に応じてドローンとトラックを用いて届けた。
20年7月豪雨時に顕著化した課題解決に向け実施した、球磨川氾濫時に隔離される地域を想定したドローンによる配送は、災害時の即時対応の有効性を確認した。
避難所にチェックインする参加者の様子
人吉市のダッシュボード上に避難者の属性を表示している様子
あゆの里の屋上を離陸する物流専用ドローンAirTruck
HASSENBAに着陸し荷物を置き配して再離陸するAirTruck
実証実験に使用した日本発物流専用ドローン“AirTruck”
災害時の孤立地域への輸送を想定して、あゆの里から歴史の広場までの河川横断のルートとあゆの里からHASSENBAまでを、エアロネクストがACSLと組んで物流用途に特化し開発した可搬重量(ペイロード)最大5kg、最大飛行距離20kmの物流専用ドローンAirTruckを使って災害物資を配送した。
今回の実証実験を通じて、住民や観光客が安心してパーソナルデータを提供できる仕組みと、データ提供を促進する最適なサービス内容を模索するため、データの活用方法、住民の同意プロセス、データの追跡方法など、データ利活用に関する機能を検証する。さらに、有識者の助言・監修を受けながら、情報銀行で住民や観光客のパーソナルデータを取り扱う上でのルール整備の指針を提案する予定。
(藤原秀行)