「ゾンビ企業」は17.1%の1.7万社、業種別で運輸・通信が2位

「ゾンビ企業」は17.1%の1.7万社、業種別で運輸・通信が2位

帝国データ調査、東日本大震災後並みの高水準:コロナ禍の「ゼロゼロ融資」影響と指摘

帝国データバンクは1月19日、経営状況が悪く政府の助成や金融機関からの支援頼りになっている「ゾンビ企業」の動向に関する調査結果を取りまとめた。

国際決済銀行(BIS)の「ゾンビ企業」が基準に設定している「3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR、支払利息をどれだけ利益でカバーできているかを示す指標。数値が低いほど資金繰りに余裕がないことを表す)が1未満、かつ設立10年以上」の定義に基づき、2022年度のゾンビ企業率を算出した。

帝国データが22年度の財務データを把握している企業のうち、「3年連続でICRが判明、かつ設立10年以上」の企業は10万1478社。このうち、BISの定義に該当するのは17.1%の1万7387社に上った。

業種別では「小売」が27.7%でトップ。「運輸・通信」が23.4%、「製造」が17.8%などと続いた。

07年度以降のゾンビ企業率は、19年度の10.0%から新型コロナウイルス禍で上昇傾向を見せ、20年度は11.6%、21年度は13.5%。22年度は3.6ポイントと大きく上昇した。上昇率は調査開始の07年度以降で最大という。

また、22年度は過去10年間で最も高い比率となり、東日本大震災後の12年度(17.0%)並みの水準。帝国データバンクは「日本企業全体の約6社に1社で、企業の“ゾンビ化”が進んでいるとの見方もできる」と指摘した。

帝国データバンクは企業倒産(23年8497件)の約30倍まで膨れ上がった企業の“ゾンビ化”が進んだ要因の1つに、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」が挙げられると指摘。22年9 月末時点で約245万件、実行額約43兆円に上る資金がコロナ禍で中小企業の資金繰りを支えた半面、足元ではコロナ支援策の反動が顕在化しつつあると分析した。

22年度のゾンビ企業率は「小売」、「運輸・通信」、「製造」の3業種が全体平均を上回った。21年度に比べると、全業種でゾンビ企業率が高まった。

従業員数別では「5人以下」が25.1%でトップ。「6~20人以下」が18.7%で続いた。一方、「1000人超」は2.8%で最も低く、総じて従業員数が少なくなるにつれて、ゾンビ企業
率が高まる傾向にあるという。

地域別では「東北」(21.3%)と「中国」(20.2%)が2割を超えた。中でも「東北」は東日本大震災後の各種金融支援策の影響もあり、震災から10年経った今もなお借り入れ負担が重荷になっているもようだ。半面、「関東」(14.8%)が最も低く、とりわけ「東京」は12.9%と都道府県別で最も低かった。

ゾンビ企業の財務状況について、「売上高経常利益率」「有利子負債月商倍率」「自己資本比率」の指標でそれぞれ平均値を算出し、全企業の平均1と比較。平均値は1%トリム平均(最大値および最小値からそれぞれ1%分を除外)を採用した。

企業の収益力を示す「売上高経常利益率」は、22年度のゾンビ企業平均はマイナス4.04%となった。全企業平均(2.75%)を6.79ポイント下回り、21年度から改善したものの、ゾンビ企業の収益力は依然として低いことをうかがわせた。

「有利子負債月商倍率」は22年度のゾンビ企業平均で9.87倍と、月商の約10倍の債務を抱えていることが分かる。21年度からわずかに改善しているが、ゾンビ企業の有利子負債自体、全企業平均(5.58倍)の2倍近くの規模のため、過剰債務の状態が依然続いていることを示している。

企業の安定性を示す「自己資本比率」に関しては、22年度のゾンビ企業平均はマイナス5.36%。21年度より悪化しており、債務超過状態から抜け出せていない。全企業平均(28.29%)と比べると、ゾンビ企業は会社経営の安定性で大きく見劣りしている。。

22年度のゾンビ企業率17.1%を、帝国データバンクが保有する企業概要データベース「COSMOS2」収録の約147万社を母集団として当てはめると、22年度のゾンビ企業数は約25万
1000社と推計。集計開始の07年度以降で、11年度(約27万4000社)に次いで2番目の規模になった(10年度と同数)。21年度(約19万6000社)からは5万5000社増え、ゾンビ企業数は 3年連続で増加した。

22年度の約25万1000 社について、収益力・過剰債務・資本力の3項目で分析したところ、収益力は経常赤字企業が推計14万4000社で全体の57.4%に達した(21年度推計11万2000社、59.8%)。過剰債務状況は有利子負債が月商の8.5倍以上の企業が推計10万4000社で全体の41.5%(21年度推計8万3000社、44.4%)。

加えて、資本力は債務超過企業が推計9万5000社で全体の37.7%に到達した(21年度推計6万8000社、36.4%)。3項目全てに該当する企業は推計4万1000社、16.4%(21年度推計3万 3000社、17.7%)で、1年で推計8000社増えた計算となる。

(藤原秀行)※いずれも帝国データバンク提供

経営/業界動向カテゴリの最新記事