NOxの規制に抵触の可能性も、特別調査委で原因究明開始
IHIは4月24日、子会社で漁船や内航船、タグボードといった船舶用エンジンなどを手掛けるIHI原動機の国内工場で不適切な行為をしていたと発表した。
エンジン製品を出荷する際、顧客に提出する「燃料消費率」に関し、試運転で測定したものとは異なる数値に修正していた。
当該行為が発覚したのはIHI原動機の新潟内燃機工場(新潟市)と太田工場(群馬県太田市)。
IHIによれば、今年2月下旬、IHI原動機の従業員から不適正行為の申告があり、両社で社内調査を実施、修正の事実を確認した。現在は実測値を記載するよう是正したという。
IHIは同日、「現時点で各種エンジンの試運転および実際の使用時において、安全性に疑義を生じさせる事案は確認されていない」と説明。「信頼を裏切る結果となり、多大なるご迷惑とご心配をおかけする事態となったことを深くおわび申し上げます」と謝罪した。
現在、法律や規格に抵触していないかどうかを調査している。今回の事案を受け、IHTIは外部有識者による特別調査委員会を設置、原因究明と再発防止策検討を進める。
船舶用エンジンについては、海外向け製品で、海洋汚染防止法や国際海事機関で定めているNOx(窒素酸化物)の規制に抵触している恐れがあるという。
出荷分の8割強で修正
IHIによると、2003年以降のデータをチェックしたところ、今年4月23日現在、船舶用エンジンは58機種について、国内外で出荷した4881台のうち、8割強の4215台でデータを修正、そのほぼ半分に相当する2046台が顧客に提出している燃料消費率の仕様値を満たしていなかった。
また、発電装置や鉄道車両など向けの陸上用エンジンも、40機種に関し、出荷した146台のうち、9割の134台でデータを修正、その1割程度の12台が仕様値に達していなかった。
仕様値を満たしていない製品は、実測値と仕様値の乖離が船舶用エンジンで平均1.8%、陸上用エンジンが1.2%だった。
関係者にヒアリングしたところ、燃費データを良く見せたり、データのばらつきを整えたりするために修正していたとの証言があったほか、前任者から引き継いだとの説明もあったという。
IHIは「コンプライアンス意識の欠如や職場風土の問題などが存在するものと考えている」と推測している。
(藤原秀行)