ニチレイロジ、24年問題対応の効率的な長距離輸配送システム「SULS」拡充へ

ニチレイロジ、24年問題対応の効率的な長距離輸配送システム「SULS」拡充へ

嶋本社長が事業報告会で表明、新たな低温物流ネットワークを東北から運営開始も

ニチレイロジグループ本社は5月20日、東京都内の本社で、2023年度の事業報告会を開催した。

嶋本和訓社長は24年度の重点施策として、「2024年問題」対策として注力している、荷台部分を切り離せるトレーラーの特性を生かして中継輸送を推進しトラックドライバーを物流拠点の積み下ろし作業から解放する輸配送システム「SULS(サルス)」に関し、首都圏から東北や静岡、新潟向けの新路線を設ける方針を表明。機能を拡充させていく考えを強調した。

加えて、他社の運営拠点の協力も得ながら、より迅速かつ安定的な輸配送を可能にする新たな低温物流ネットワーク「エヌエルリンク」を構築する計画を説明。東北エリアからスタートし、順次全国へ展開していく計画を明らかにした。

嶋本社長は「2024年問題を迎え物流はさらに厳しい環境となり、卸やメーカーの皆様にとっては小売専用センターへの納品車両確保が今後ますます難しくなることが想定される。こうした顧客課題へのソリューションがエヌエルリンク。顧客提供価値の高度化を図る」と狙いを説明した。

低温物流拠点内の入出庫などのデータを生かして業務を抜本的に効率化する「データドリブン運営」の実現に向け、24年度はR&Dセンターの設置などを予定していることを解説した。


嶋本社長(ニチレイロジグループ本社提供)

嶋本社長は、24年3月期の決算について、連結売上高が前期比5%増の2574億円、営業利益も5%増の158億円で増収増益を確保したと説明。物価高騰による荷動き鈍化や各種コスト上昇があったものの、集荷・効率化施策による経費抑制や海外事業の成長などが収益を押し上げたという。

現行の中期経営計画最終年度の24年度(25年3月期)は売上高が計画の2600億円から2740億円、営業利益が162億円から170億円にそれぞれ引き上げられるとの見通しを示した。

23年度の働き方改革の成果として、RPA(パソコンを使った事務作業の自動化技術)活用の定着により、事務従業員1人当たりの年間平均労働時間の10%超に相当する40万時間の業務短縮を達成、その分を独自の人財育成プログラムに充てられたと説明した。

SULSについては、関東の各拠点からの貨物を集約する「ゲートウェイ(GW)機能」を持つ物流センターを北関東エリアで新設し、仙台方面向けルートを4月15日に開通させたほか、既存の厚木GW(神奈川)から静岡方面向けルートも5月13日に稼働を始めたことを紹介。新潟向けルートも24年度上期に開通させる計画を進めていることに言及した。

嶋本社長は「持続可能な輸配送基盤の構築に向け、他社アセットを効果的に活用しながら着実に路線の拡大を進めている」と強調。24年度は東名阪を中心に保有トレーラーを24年度末で計50本まで増やすほか、工場発やマザーデポ発の幹線輸送にSULSを活用して取り扱いを増やすとともに、西日本エリア発の幹線上り貨物の集荷拡大を図る方針を明示した。

小売店など向けリテール事業は、自社の拠点間を結ぶ現状の商品供給網を、他社や協力会社の拠点も生かしてより拡充し、いずれかの拠点に納品すればエリア内のどこにでも納品できる効率的・安定的な輸配送体制を構築する方針を解説。まず東北エリアからスタートする予定を示した。

データドリブン運営実現のための施策として、24年度は既存業務でデータドリブン運営モデルの構築に取り組むほか、年度内にR&Dセンターを立ち上げ、さまざまな実証実験をスピーディーに行える環境を整備するとともに、経営と現場の視点を併せ持つ「アナリスト人財」の育成強化を図ることを打ち出した。

このほか、海外事業ではオランダと英国の現地グループ企業を再編し、シナジー効果を高めることや、ポーランドで24年中に冷蔵倉庫2カ所を新増設して小売業向け冷凍物流の需要開拓などを図ること、タイのバンコク北部で冷蔵倉庫を来春稼働させること、ベトナムでも3温度帯倉庫を立ち上げることを報告した。

(藤原秀行)

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