不当な製品返品も
公正取引委員会は7月5日、下請け事業者に対し、金型の無償保管などを強いていたのは下請け法で禁じている「不当な経済上の利益の提供要請」や「不当な返品」に該当するとして、トヨタ自動車子会社で救急車の製造などを手掛けるトヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD、横浜市)に再発防止を勧告した。
公取委によると、TCDは下請け事業者49社に対し、遅くとも2022年7月以降、製品を長期間発注する予定がないのにも関わらず、自社が保有している金型や検査用器具など664個を無償で保管させていた。損失額は確定していないが、数千万円に達する可能性があるという。
TCDはまた、下請け事業者65社が納品したバンパーなどの製品に関し、品質検査をしていないにもかかわらず瑕疵があると主張し、22年7月から今年3月までの間、工賃を含めた代金総額で約5430万円相当を返品していた。
2件について、一部の下請け事業者が重複しているという。
公取委の指摘を受け、TCDは6月30日、不当な返品に関する損失を全額、下請け事業者に支払った。
公取委はTCDに対し、金型などを無償で保管させていた件についても早急に損失額を確定させ、下請け事業者に支払うとともに、再発防止策を報告するよう要求した。
TCDは7月4日、「勧告を大変重く受け止め、原点に立ち戻り、法令順守を徹底してまいります。コンプライアンスの観点で本件の振り返りを行い、それに基づいた社員教育や取引先様とのコミュニケーション強化などの再発防止策を取ってまいります」と謝罪するコメントを発表した。公取委からの勧告の対象期間以外にも取引の総点検を実施し、違反行為が認められた場合は金銭負担相当額を払うと強調している。
(藤原秀行)