価格転嫁率が過去最高の44.9%到達も「運輸・倉庫」は3割台にとどまる

価格転嫁率が過去最高の44.9%到達も「運輸・倉庫」は3割台にとどまる

帝国データバンク調査、「全くできない」は依然1割残る

帝国データバンクは8月28日、企業の価格転嫁に関する動向調査結果を取りまとめた。

調査は7月18~31日、全国2万7191社を対象に実施し、有効回答企業数は1万1282社(回答率41.5%)だった。

 
 

自社の商品・サービスに対し、コストの上昇分を「多少なりとも価格転嫁できている」企業は78.4%に達し、「全く価格転嫁できない」は10.9%にとどまった。

コスト1アップに対してどの程度商品・サービスの価格に上乗せできているかを示す価格転嫁率は全体で44.9%で、今年2月の前回調査時から4.3ポイント上昇し、過去最高を記録した。

一定程度の価格転嫁が進んでいることをうかがわせたが、帝国データバンクは「依然として5割以上を企業が負担している」と指摘。業種によって価格転嫁率が差がある状況も大きくは変わっていない。

価格転嫁の程度を見ると、「(コストアップ分の)2割未満」が19.6%、「2割以上5割未満」が18.6%、「5割以上8割未満」が20.2%、「8割以上」が15.5%、「10割すべて転嫁できている」が4.6%となった。

一方、「全く価格転嫁できない」企業は10.9%と前回調査から1.8ポイント低下したが、依然1割程度ができていないことになる。

価格転嫁率が高い主な業種は「化学品卸売」(65.0%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(63.0%)など。半面、一般病院や老人福祉事業といった「医療・福祉・保健衛生」(19.8%)、「娯楽サービス」(21.7%)、「金融」(25.8%)、「農・林・水産」(27.3%)などが低かった。

 
 

また、帝国データバンクはサプライチェーン別に価格転嫁の動向を見たところ、前回調査と比較して、改善幅は小さいものの全般的にやや価格転嫁は進展していると分析。とりわけ、サプライチェーン全体に関わる「運輸・倉庫」は34.9%に達した。

企業からは「物流の2024年問題の後押しもあり、取引先との交渉がスムーズにいくことが多い」(運輸・倉庫、愛知県)といった声が聞かれ、2024年問題への対応が追い風になっている様子が浮かび上がった。ただ、「運輸・倉庫」は全体から10ポイントほど低かった。

川下に位置する「飲食店」(36.0%)や「飲食料品小売」(40.9%)は前回調査から転嫁率が低下した。「ある程度の値上げは消費者も理解してくれるが、あまりにも価格が上がると来店率が下がると思いなかなか値上げに踏み切れない」(飲食店、愛媛県)など、客離れを危惧して転嫁になかなか踏み切れない実情をうかがわる声が出ていた。

(藤原秀行)※いずれも帝国データバンク提供

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