日本ドローンビジネスサポート協会、要救助者を上空から捜索
一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会(DBA、岡山市)は9月5日、石川県穴水町消防署と輪島綜合自動車学校(石川県輪島市)の合同訓練で、ドローン支援を実施したと発表した。
訓練は能登半島地震で崩落した山間部を使用して実施、当日は朝から雨となったことで、より困難で実践的な訓練になったという。
DBAと地域行政の連携
使用機材
訓練現場
訓練概要
[日時]2024年8月29日(木)9:30-11:00
[場所]石川県鳳珠郡穴水町
ドローンによる上空からのアナウンス
ドローンによる状況調査
ドローンによる要救助者の捜索
消防署員による重機を使用した救助経路の確保
緊急アラート警報による一時退避(二次災害防止)
ドローンによる救助物資の輸送
ドローンによる崩落体積の算出
ドローン映像の遠隔地への映像配信+大手キャリア不通時の通信確保(全般)
訓練内容
1.ドローンによる上空からのアナウンス
スピーカーを搭載したドローンを使用し、上空から訓練開始のアナウンスを実施
放送する音声はドローンの送信機で録音し、飛行するドローンにデータを転送して再生。100m程の高度で飛行するドローンから放送される音声を雨の中であっても地上でクリアに聞き取ることができた。
災害時には要救助者の捜索・負傷確認などで利用することができる。
使用ドローン
DJI MATRICE300RTK+CZI MP130 V2(スピーカー)
スピーカーを搭載したドローン
上空からのアナウンス
訓練では、撮影用カメラを搭載したドローンを使用し、現場状況を撮影して映像を転送。広角および望遠カメラを使用することで、効率的に現場全体の状況を確認した。
ドローンからの映像は米Starlink(スターリンク)回線を使用してリアルタイムにインターネット上で表示することが可能と確認した。
災害時には対策本部や各現場で同時確認することで迅速な情報共有を行うことができる。
使用ドローン
DJI MATRICE300RTK+H20T(クワッド複合カメラ)
現場状況映像の確認
3.ドローンによる要救助者の捜索
望遠+赤外線カメラを搭載したドローンを使用し、要救助者を捜索し映像および位置情報を転送。土砂崩れ現場に取り残された要救助者を捜索した。
安全な訓練施設ではなく、実際の崩落現場を使用することで「捜索手法」を確認するとともに「見つかりやすさ」も確認することができた。今後の防災訓練を通じ町民に「要救助者となった際」の行動についても意識を高めてもらうことにつなげていく考え。
使用ドローン
DJI MATRICE300RTK+H20T(クワッド複合カメラ)
赤外線カメラを使用した捜索
望遠カメラを使用した捜索
4.消防署員による重機を使用した救助経路の確保
重機資格を取得した消防署員が重機を操作して障害物を除去。穴水町では消防署員自らが重機操縦の免許を取得。重機取扱い業者の応援到着を待たずに迅速な救助に当たることを想定している。
実際の崩落現場を使用することで免許取得時の訓練や通常の工事現場などでの訓練とは異なる危険性などについても確認することができた。
消防署員が重機を操作
5.緊急アラート警報による一時退避(二次災害防止)
警報音+ライトにより作業地域へ危険性を通報
作業員の安全を確保するために、音と光によって危険状況を現場に知らせる。通報の合図により現場作業員は安全地帯へ避難する。
緊急アラートにより作業を一時中断して退避
6.ドローンによる救助物資の輸送
運搬機能を有したドローンを使用し、救助現場まで物資を輸送。救助員が要救助者のもとに到着した際に救助に必要な機材・物資を現場まで空輸する。
物資を直接最終現場まで空輸することで、救助員は、重たい物資を担いで現場を移動する必要がなくなり、救助員の安全の向上とともに迅速な移動が可能となる。また、現場到着後に必要物資があった場合の輸送にも効果が期待される。
使用ドローン
DJI FryCart30+ウィンチシステム
空輸用ドローン「FlyCart30」
約10kgの救助物資を輸送
ウィンチを使用してホバリングした状態で物資を設置
7.ドローンによる崩落体積の算出
レーザースキャナを搭載したドローンを使用し、崩落現場を測量。ドローンの測量機器としての能力を活用して、迅速に現場状況を計測する。
レーザースキャナを使用することで、短時間で森林部の地面状況などの把握ができることが確認できた。様々なデータ活用方法があるため、現場作業員がデータの取扱いに慣れる必要があるという。
使用ドローン
DJI MATRICE300RTK+L1(航空用レーザースキャナ)
崩落現場の3D点群データ
崩落体積の算出
8.ドローン映像の遠隔地への映像配信+大手キャリア不通時の衛星通信確保(全般)
ドローンの映像+飛行地点を衛星インターネット回線を使用して転送。能登半島地震の際には、大手キャリアが不通となり、情報伝達が既存の方法では上手く行えなかったことから、Starlink通信を利用した。
複数のドローンや通信機器を接続しても、通信速度・使用電力など実際の運用に十分な能力であることが確認できた。また、設置、設定も手軽。衛星通信は災害時に有効な手段となるが、DBAはデータの取り扱いには注意する必要があると指摘している。
映像配信にはDJIの既存アプリ(基本機能は無料)を使用し配信設定の手軽さを確認した。また、固定・運用費用の軽減にも効果的だと判断した。
モニターを使用して複数の配信映像を切り替えて確認・配信
大手キャリア通信の不通時を想定して「Starlink」での通信
使用回線
Starlink
映像伝送
DJI FlightHub2
映像伝送
DJI DeliveryHub
参加者
穴水町消防署
輪島綜合自動車学校(aotoriドローンスクール)
穴水町役場
穴水町議会
一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会(岡山県岡山市)
(以下、日本ドローンビジネスサポート協会:関係会社)
株式会社Drone Partner’s(石川県珠洲市)
金沢ドローンサービス合同会社(石川県金沢市)
株式会社MITINAS(広島県福山市)
株式会社安来モーテル(島根県安来市)
Boons(和歌山県海南市)
青鷹Drone(東京都三鷹市)
(以下、オブザーバー参加)
奥能登広域圏事務組合 消防本部
輪島警察署
日本ドローンビジネスサポート協会メンバー
(藤原秀行)※いずれもDBA提供