三井不と日鉄興和不が共同開発、25.6万㎡と都内最大級
三井不動産と日鉄興和不動産は10月2日、東京都板橋区舟渡で共同開発し、9月30日に竣工した大規模物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」をメディアに公開した。
日本製鉄の工場跡地を活用。地上6階建て、延床面積は25万6157㎡と都内で最大級の規模を備えている。現時点でスペースの約9割で、ヤマト運輸や丸和運輸機関など4社の入居が決まっているという。
首都高速道路5号池袋線の中台ICから約2.7km。両社は都心部への配送に加えて、首都圏広域をカバーできる立地と見込んでいる。
「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」の外観
新たな試みとして、ドローン実証実験施設「板橋ドローンフィールド」を併設。物流や設備点検、警備、災害時の物資輸送などの用途でドローン活用を後押しするため、さまざまな飛行実験が可能なエリアとして運営する。
東京大学やブルーイノベーションと提携し、技術開発を促進。GPSを使えない屋内で安定飛行を可能にする技術や、長距離の飛行を実現するドローンポート(専用離着陸・充電設備)の開発、高層マンションへのドローン荷物配送といった領域を念頭に置いている。
並行して、KDDIスマートドローンが人材育成のための教育施設「スマートドローンアカデミー」を都内で初めて開校しているほか、会員制の「ドローンコミュニティ」を運営し、ドローンメーカーや研究者ら同士の交流を促し、新たなビジネスの創出も支援する。
同施設ではドローンを使った施設の外壁や橋梁の点検、物資輸送などのケースを想定して飛行実験、得られた知見をドローンの産業利用加速に役立ててもらうことを想定している。
この日はブルーイノベーションなどの協力を得て、ドローンで施設屋上の太陽光発電設備を点検するデモを実施した。
板橋ドローンフィールド
ドローンフィールド内ではドローンの操縦が可能
ドローンの関係者が交流できるラウンジ
免震装置や72時間対応の非常用発電機、備蓄倉庫などを導入しBCPに対応。入退館管理、24時間常駐の防災センターなど、オフィスビル並みのセキュリティ機能を持たせている。
施設内にはラウンジを2カ所設置。トラックドライバーの休憩室やジェンダーレストイレ、礼拝室、ウェブ会議用ブースなど就労環境の向上に注力している。
平時と災害など緊急時のいずれの局面でも地域に貢献できる「フェーズフリー」な開発を標ぼう。約600mの緑道を川沿いに設け、約9000㎡を公開空地として整備。親水空間を設け、多様なイベントを開けるようにしている。
併せて、川に面していることを踏まえ、水害発生時に従業員や地域住民が約1000人、一時退路できる場所を設けているほか、敷地内にはヘリポートとして使える場所も設けている。災害時は板橋区の災害物資の保管・配送拠点として使えるよう設計している。
施設前の公園で子供たちが楽しそうに遊んでいる
緊急時にはヘリポートとしても使える公園
川沿いで人々が行き交う
施設と公園などを結ぶ橋梁
施設内に設けている災害時の備蓄スペース
屋上に設置した太陽光発電設備で電力を生み出し、余剰分は板橋区内の73の小中学校に供給。“エネルギーの地産地消”を進める構想を立てている。
現地で同日、記者会見した三井不動産の篠塚寛之執行役員ロジスティクス本部長は、ドローンという新産業創出支援にも踏み込んだことなどを踏まえ「当社が進めている『街づくり型物流施設』の集大成として、希少な立地とトップレベルの倉庫スペックを両立、お客様からも評価いただいている」と自信を示した。
日鉄興和不動産の加藤由純執行役員企業不動産開発本部副本部長は「工事費が上がって事業環境としては結構厳しいが、まだまだ物流のニーズはあるだろうと思っている。特に『2024年問題』で拠点の見直しを物流会社さんとしても考えていかないといけないので、それに伴う需要もある」と指摘。危険物倉庫や冷凍・冷蔵倉庫の開発にも挑んでいきたいとの思いを語った。
会見後の撮影に応じる(左から)三井不動産・篠塚氏、日鉄興和不動産・加藤氏、板橋区・坂本健区長
(藤原秀行)