Spectee調査、強靭化対策は半数が不十分と回答
Specteeは11月14日、製造業に従事する経営層とサプライチェーン業務に携わる業務担当者の計500人を対象に実施した、「サプライチェーン強靭化」に関する調査結果を取りまとめた。
対象者の約半数が、サプライヤーに関する情報の管理にエクセルやスプレッドシートなど表計算ソフトを利用していると回答。いまだ人手に依存している傾向が強いことを示唆した。
また、約25%が過去に自然災害でサプライチェーンに1億円以上の損害が生じたと答えている一方、約半数は現在のサプライチェーン強靭化対策が十分だとは思わないと選択しており、企業にとって自然災害が大きなリスクになっているものの、対応しきれていないことが明らかになった。
調査名称:サプライチェーン強靭化に関する調査
調査方法:インターネット調査(調査会社:クロス・マーケティング)
調査期間:2024年11月1〜5日
調査対象者:従業員500人以上の製造業に務める経営層50人、サプライチェーン業務に関与・または興味のある社員450人
サプライヤーの情報管理に普段用いているツールを尋ねた結果(複数回答可)、「Excel、スプレッドシートなどの表計算ソフト」と回答した人が48.8%でトップ。「特にツールを使用していない」も20.8%に上った。Specteeは「サプライヤー情報の管理について、やはり『人手頼り』となっている状況があると推測される」と指摘している。
こうしたツールを活用する中での課題を選択してもらったところ(複数回答可)、「手作業が多く、非効率になりがち」が34.6%でトップ。次いで「データやプロセスの可視化がしにくい」(27.0%)、「情報を更新できず、常に最新の状態に保つことが難しい」(26.8%)と続いた。
Specteeは、サプライチェーンの途絶を招くような自然災害やインシデントが生じた際、表計算ソフトで管理していると、サプライチェーンのどの部分にインパクトがあり、結果的にどの部材・完成品にその影響が及ぶのかを即時に把握するのは大変困難だと分析。「サプライチェーン管理の実態において、リスク事象発生をリアルタイムで覚知し、その影響範囲を迅速に特定、的確なアクションにつなげることを実現できている企業は多くはないと推測できる」との見方を示している。
また、「表計算ソフト」や「ソフトウェア」を活用している人は「非効率になりがち」との回答が最も多く、「外注」を選んだ人は「コスト」や「開発・メンテナンス」に課題があると答えた向きが多かった。
次に、「サプライチェーンマネジメント(SCM)について、あなたが今後最も重点的に強化したいと考えている項目はなんですか?」と質問した結果、経営層は「リスク管理」(42.0%)、係長・主任・一般社員は「自動化」が27.4%でそれぞれ最多。企業内のレイヤーによって重点項目に違いがあることが浮き彫りとなった。
Specteeは「現場に近い層と経営層で、SCMにおけるギャップが浮き彫りになり、サプライチェーンの強靭化を進めるためには、こうした異なる視点を共有し、会社全体での認識を統一することが重要」と解説している。
経営層・部長クラスに対し、「リスク事象(自然災害・感染症・事故・地政学リスク・サイバー攻撃・サプライヤーの倒産)によって、過去にあなたのお勤め先が受けたサプライチェーンの被害額は、それぞれどの程度でしたか?」と聞いたのに対し、自然災害によって被害を受けた人が最も多く、「10億円以上の被害を受けた」と回答した割合は10.9%に上った。「1億円以上の被害を受けた」は合計で約25%に到達した。
Specteeは「今後、南海トラフ地震や首都直下地震、気候変動による豪雨などのリスクが高まる中で、自然災害への対策は日本企業のサプライチェーン強靭化において急務になりそうだ」と警鐘を鳴らしている。
最後に、「サプライチェーン強靭化に対してあなたのお勤め先では下記の対策はされていますか?また、それぞれの対策は十分だと思いますか?」との問い掛けに対し、全項目で「対策はしているが十分だと思わない」と回答した人の方が多くなった。
およそ半数が「強靭化対策は十分ではない」と感じている現状が浮き彫りになった。中でも「サプライチェーン可視化情報基盤の整備」については、対策未実施の企業も多く、リスクへの迅速な対応や効率的な情報管理の面で課題が残っていることがうかがえた。
Specteeの根来諭取締役COO(最高執行責任者)は今回の調査結果について「自然災害の多発や地政学リスクの高まりにより、サプライチェーン途絶のリスクが高まっている中で、現状の管理手法では不十分で、サプライチェーンを強靭化しなければならないという意識が広く共有されていることがうかがえる。しかし、経営層では『リスク管理』を重点課題と挙げている一方、現場は『自動化』を挙げており、意識の乖離が見られる。サプライチェーンの強靭化を実現するには、冗長化など時にはコストアップにつながる施策を打つ必要があり、現場に任せるのではなく経営層がコミットして取り組むことが重要だと考える」とコメントしている。
(藤原秀行)※いずれもSpectee提供